「要注意人物」田中角栄の事件史外伝『炭管事件と獄中立候補』Part1~政治評論家・小林吉弥

大方の人間は、一生に一度くらいはいよいよ土俵際、時には断崖絶壁で、残るのはかろうじて踵ひとつといったピンチに立つことがある。晴れて代議士バッジをつけた当選1年生の30歳、若き日の田中角栄元首相もまた、絶体絶命の大ピンチに追い込まれていた。 昭和22(1947)年6月に成立した社会党など3党連立の片山哲内閣は、石炭産業の国有化をうかがう臨時石炭鉱業管理法案(略称「炭管法案」)を企図していた。田中の大ピンチとは、それに猛反対する炭鉱業者から、反対運動への工作費として小切手100万円のワイロを...