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蝶野正洋『黒の履歴書』~WBCで改めて感じる国際試合の面白さ

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

WBCで日本代表チームが優勝し、14年ぶりに世界一を奪還した。1次ラウンドから圧倒的な試合展開で勝ち進み、準決勝のメキシコ戦での劇的な逆転勝利には、日本中が大いに沸いた。決勝のアメリカ戦も最後まで緊張感のある試合で、手に汗を握ったよ。


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今回のWBCは、なんと言っても「侍ジャパン」のメンバーが素晴らしかった。子供の頃に読んでいた野球マンガ『アストロ球団』のような、選ばれし運命の選手たちが奇跡的に集ってきたようなムードがあったし、間違いなく史上最強の日本代表チームだったと思う。

投打に大活躍の大谷翔平選手をはじめ、チームのまとめ役を務めたダルビッシュ有選手や吉田正尚選手といったメジャーリーガーたちの実力を改めて知ることができたし、日本球界の実力者たちの活躍も頼もしかった。スランプから最後に調子を取り戻した村上宗隆選手も劇的だったね。

特に助っ人のような形でチームに加入して、ムードメーカーとなったヌートバー選手には目を見張った。

大会が始まるまで、ほとんどの人が知らなかった選手をなくてはならない存在に押し上げた栗山英樹監督の采配も見事だったと思う。

以前のイチロー選手が引っ張っていた頃の日本代表チームは、もっとピリピリ感があった。今回のチームは緊張感がありつつも、野球を楽しもうという気持ちが見えて、いまの若者たちらしいよい雰囲気だったね。

今後も継続的な交流を

選手それぞれが自分に与えられた役目を果たして、誰かの調子が悪かったら、誰かがそれを埋めに行く。メンタル面も含めてお互いにカバーし合うという意識が見えたし、何よりもチームワークが抜群だった。

そんな精神的な部分でも、大谷選手の存在感が突出していた。ストイックな人柄も伝わってきてプレーも気持ちもレベルが高い。まさにスーパースターだと思う。

彼のようなカリスマ的な存在が1人いるだけで、野球界全体を押し上げる力がある。野球ファンがさらに広がることはもちろん、日本球界全体の意識も高くなり、大谷選手に憧れて野球を始める子供たちも増えていく。その影響や経済効果は計り知れないよ。

昨年のサッカーワールドカップの日本代表は、突出したカリスマのような選手は生み出せなかった。かつての三浦知良選手や中田英寿選手、本田圭佑選手のような、サッカーをほとんど見てなくても名前だけは知っているというくらいの選手が必要なんだよね。

大谷選手は、野球界を超えて日本を代表するスポーツアスリートとなりつつある。サッカーで言えば、ブラジルのネイマール、アルゼンチンのメッシのような存在と同等ということだよ。

今回のWBCは、各国の選手たちが戦う国際試合の面白さも改めて感じさせてくれた。チェコやイタリアなどの、野球があまり盛んではない国々の選手たちのプレーは新鮮で、応援したくなるよね。日本のプロ野球界は、こういう国々の選手に門戸を開いて育成するとか、継続的な交流があってもいいんじゃないかな。

世界的に野球というスポーツビジネスに対する評価は1段階上がったと思う。次回のWBCは3年後の2026年に開催することが発表されたけど、その放送権やPPVの価格がハネ上がることは確実だろうね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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