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コロナウイルス“変異種”にワクチン効果なし!? 作り替えが間に合わない…

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厚生労働省は1月18日、静岡県の20~60代の男女3人が、英国で流行している新型コロナウイルスの変異種に感染していたと発表した。3人とも英国滞在歴はなく、滞在歴がある人との接触も確認されていない。

同省は「国内で感染したと考えられる」と説明している。3人のうち2人は感染経路が不明で「市中感染が起きた」と見られる。国内で感染経路不明の変異種の感染者が確認されたのは初めてのこと。22日には東京都内の10歳未満女児の感染も明らかになった。

公衆衛生が専門の医師で作家の外岡立人氏が言う。

「欧州では、英国の変異種の感染者が6~7割を占めています。それが日本にも入っているが、日本の場合、今、何が流行しているのか分からない。研究者が個人レベルで遺伝子まで調べてはいるが、それを共有するシステムが出来上がっていない状況なんです。国立感染症研究所も遺伝子を調べてはいるんですけどね。静岡で見つかった変異種で日本は大騒ぎしているが、ちょっと反応が遅過ぎる。私は昨年来の急激な感染者数の増加は、英国変異株によるものと判断しています」

しかも、日本では医療崩壊が進んでいる。

「新型コロナウイルス第3波の感染拡大が顕著になった昨年12月から1月22日時点で、自宅療養中に症状が悪化して亡くなった感染者は10都府県で計19人に上ることが、新聞各社のまとめで分かりました。病床のひっ迫によって受け入れ先の調整が難航、あるいは軽症者の容体が急変するケースもあったそうです」(サイエンスライター)

「治療を受けられない可能性がある」と言うべき

死亡した19人の中で、最も多かったのは東京都の6人。続いて栃木、神奈川、京都、大阪が2人。群馬、埼玉、千葉、岐阜、広島が1人だった。

厚労省によると、自宅療養者は年末年始に急増。1月13日時点で3万人を超え、昨年12月16日から約3.8倍に増えているのだ。

「多くの感染者は自宅で、いつ悪化の波が身体の中で発生するのか怯えている状態です。日本の家庭で待機させられている感染者は、医師の診察も得られず、状況は保健師や看護師に伝えるだけ。得られるのは『様子を見てください』という判で押したような答えばかり。ベッドは空いていませんし、医師たちも忙しいのです。『様子を――』と答えざるを得ない保健師にしても、つらい業務に違いありません。こういう状態を医療崩壊と言うんじゃありませんか」(外岡氏)

しかし、政治家は「医療は崩壊寸前までいっているが、崩壊はしていない」と現状を認めようとしない。

「まず、こうした状況を改めるべきです。コロナに罹っても『治療を受けられない可能性がある』と言うべきなのです。でないと、いくら若者に『自重しろ』と呼び掛けても、他人事のように聞こえるだけではないでしょうか」(外岡氏)

変異の“きっかけ”が分からない…

世界ではコロナ変異種が拡大の一途である。

「中でも、南アフリカ、ブラジル・リオで発生した変異種は病原性が高いと言われます。もし、こうした変異種に罹患したら、ワクチンは効かないと思われます。ウイルス感染後、サイトカイン(免疫細胞の暴走)の嵐が体内で発生するまでの期間が短いからです」(外岡氏)

若者だから重症化しない…という認識は危険極まりないのである。しかも、外岡氏が指摘しているように、日本では新型コロナウイルスの中で、どういう種類のものが流行しているか分かっていないのだから、予測も立たないのだ。

では、現状で新型コロナウイルスの終息はいつごろになりそうなのか。

「率直に言うと、先は読めません。コロナの世界というのは戦国時代に似ているところがある。感染力が高く、病原性の低いものが主流となれば終息するが、病原性の高いものが主流となると、そうはいかない。しかも、いつ、どういうきっかけで変異するか分からないのです」(外岡氏)

“吸入式ワクチン”に期待

今夏の東京オリンピック、パラリンピックは中止の可能性が高くなってきた。本誌は1月21日号で『東京五輪「1月中止発表」浮上2032年招致へ』と既報しているように、英タイムズ紙(21日)も『日本政府は、新型コロナウイルス感染症流行のため、東京五輪を中止せざるを得ないと非公式に結論付けた』と報じている。そして、本誌同様、『政府は2032年の東京五輪招致に照準を合わせる』と伝えている。

日本政府、大会組織委員会などはタイムズ紙の「東京五輪中止」報道を否定しているが、もはや開催は希望的観測にすぎず、「中止すべき」という世論が支配的になりつつある。期待されるワクチン接種についても不安はつきまとう。

「ワクチンは接種後8カ月は免疫が持続されるというが、それなら新型コロナが毎年流行すると、8カ月毎に接種しないと感染を完全に防ぐことは難しいことになる。また、次々と変異株が出てきて世界に広がり、それなりに感染者数と死者数を発生させている状態では、臨機応変に発生変異株に対するワクチンを作り替え、何億人分の接種量を用意するのは不可能です。それを救う方法は、吸入式ワクチンの改良型です。駅やスーパーなどの拠点となる場所に設置して、市民が自分でスイッチオンして吸入する方式です。そして、マイナンバーカードに吸入ワクチン接種の有無を記録させるのです」(外岡氏)

下剋上のある変異種はやっかいだ。

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