まさに「家貧しくして孝子顕わる」だ。
大相撲春場所が3月26日、関脇霧馬山の劇的な初優勝で幕を閉じた。7日目に綱取りに挑んでいた1人大関の貴景勝が、左ひざを痛めて途中休場。横綱、大関がいなくなるという昭和以降、初めての異常事態に陥り、先行きが心配されたが、終わってみれば大盛況だった。
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先行する小結大栄翔を千秋楽の本割、優勝決定戦と連破し、大逆転で賜杯を抱いた霧馬山は、入門8年目での快挙に「本当にうれしい。最高の気分。優勝が決まった瞬間、気持ちが上ずって、もうどこにいるのか分からなかった。相撲部屋に入ってよかった」と満面に笑みを浮かべた。
新関脇の優勝は、昨年春場所の若隆景に次いで4人目。陸奥部屋からの優勝力士は、陸奥親方(元大関霧島)が1997年に部屋を興してから26年目で初めてのことだ。現在、協会ナンバー2の事業部長で、来年4月に定年を迎える師匠の陸奥親方の喜びもひとしおに違いない。
「(逆転勝ちに結び付いた)土俵際の粘りは稽古のたまものです。でも、これからが大事。さらに上を目指して頑張っていかないと」
来場所の出世争いに期待
これで夏場所(5月14日初日、両国国技館)は、いよいよ相撲協会がノドから手が出るほど欲しがっている大関取りに挑戦だ。
「15日間、1日一番でしっかり頑張ります」
と土俵下の優勝インタビューで霧馬山はファンに向かって誓ったが、大関昇進にチャレンジするのは、この霧馬山ばかりではない。あと一歩、というところで連敗して惜しくも二度目の優勝を逃がした大栄翔も2場所連続の2ケタ勝ち星で、大関への挑戦権をつかんだ。
さらに関脇の豊昇龍、小結の若元春らも大関取り起点の2ケタ勝ち星を挙げ、来場所は足固めの場所になる。
危機的な横綱、大関日照りが一転して大関候補ラッシュの様相に、八角理事長(元横綱北勝海)もホッとした様子で「やればできるという感覚をつかんだのでは」と目を細くした。
来場所は三役陣の出世争いが激化し、さらに大相撲が盛り上がりそうだ。
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