
パンクバンド・アナーキー(亜無亜危異)ギターリスト藤沼伸一が映画監督デビューしたワケ
80年代初頭、体制を痛烈に批判する反社会的な歌詞と、初期衝動に貫かれたサウンドで日本のパンクシーンを牽引した亜無亜危異。幾度かの活動休止を挟みながら、現在も結成当時のメンバーで活動を続ける亜無亜危異のギタリスト、藤沼伸一が初めて映画監督に挑戦した作品が『GOLDFISH』だ。
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――どういう経緯で本作を監督することになったのでしょうか。
藤沼 2017年にメンバーのマリ(逸見泰成)が亡くなって、もともと亜無亜危異は5人でしたが、翌年からは4人で活動を再開したんです。そしたら過去に亜無亜危異のスタッフをやっていたプロデューサーが、「バンドを映画化してみないか」と声をかけてくれたんです。
――80年代に一世を風靡した『ガンズ』というバンドが、メンバーの一人が傷害事件を起こして活動休止。しかし、30年後にメンバーが集まり再結成に動き出すという亜無亜危異をモチーフにしたストーリーです。
藤沼 亜無亜危異をそのまま映画化するのは、ちょっと荷が重いなと思ったんです。ドキュメンタリーや実際に起きたストーリーを繋げるだけだったら、やりたくないと。でも亜無亜危異をモチーフにしながら、俺の描きたいテーマを入れられるならってことで、2年前に脚本家の港岳彦さんとディスカッションして、この脚本ができあがりました。
――町田康さんやうじきつよしさんなど、藤沼監督と縁の深いミュージシャンも多数出演しています。
藤沼 みんなで話し合ってキャスティングは決めていったんですが、最初に決めたのが死神役の町田康でした。町田町蔵の頃から仲良くしているんですが、役者役者してる人に死神をやらせるとベタすぎるけど、アイツだったら面白いなと思ったんです(笑)。
ライブ感覚で撮影していた
――ギタリストのイチを演じた永瀬正敏さんの印象はいかがでしたか?
藤沼 この映画を撮るために絵コンテの通信教育を受けたんだけど(笑)。永瀬さんと仕事をしたことのある撮影部のカメラマンから、「永瀬さんを絵コンテの中に閉じ込めるのはいかがなものか」って言われたんです。永瀬さんは自由にやらせたほうが面白い役者さんだと言うので、一度段取りをやって、本番は永瀬さんに自由に演じてもらったら、素晴らしかった。だから、これだけは俺も譲れないというシーン以外は、基本的にライブ感覚で撮ることにしたんですが、緊張感があって面白かったですね。
――ボーカルのアニマルを演じた渋川清彦さんも、本物のパンクスという佇まいで最高でした。
藤沼 KEE(渋川)君は、この映画の前にドラマの仕事が入っていたんだけど、それが終わったら自分から髪を剃っちゃって、「この次の仕事は大丈夫?」って不安になっちゃった(笑)。
――初監督作とは思えないほど、随所に藤沼監督のビビッドな色彩感覚が発揮されていたのが印象的でした。
――北村有起哉さん演じるギタリストのハルは、自身との葛藤に悩み、酒や女に溺れていきます。マリさんがモデルになっていますが、どのように人物像を作り上げていったのでしょうか。
藤沼 マリは傷害事件を起こして刑務所に入ってからは、おそらくすまないと思って、俺たちと会わずに距離を置いたんです、だから、出所してからマリと遊んでいた人たちやバイト仲間に俺自身が会って、この映画のためにインタビューをしました。そのときの書き起こしを脚本家にも投げて、「こういうエピソードがあったんだ」とホワイトボードに書き出して、人物像を作り上げていきました。
亜無亜危異を結成したのは1978年。翌年にヤマハ主催のアマチュア音楽コンテスト『EastWest』で入賞。それをきっかけに1980年にメジャーデビューを果たした。
――藤沼監督はデビュー前から不良だったんですか?
藤沼 亜無亜危異って暴力的なイメージが強いでしょう。もうおっさんになったから言っちゃうけど、もともと俺は地味なガキで、家にいるほうが好きなタイプ。でも、思春期になってストリートに出るとカツアゲされたり、意味もなく殴られたりするじゃない。そこから身を守るためには不良になるしかないから、そっちになったっていうね。
――どのようにパンクロックと出会ったのでしょうか。
藤沼 初めてパンクを聴いたのは高校を卒業する年で、17歳か18歳のとき。それまではピンク・フロイドが好きで、『狂気』なんてレコードが擦り切れるぐらい聴き込んでいたんです。でも、セックス・ピストルズやクラッシュが出てきて、クラスメートの間で「パンクってすげー!」ってなって。休み時間に情報交換をして、金を貯めてレコードを買って回し聴きをして。じゃあ俺たちもバンドをやろうってことになりました。
――どうしてギター担当になったんですか?
――結成当時からライブハウスに出ていたんですか?
藤沼 いや、友達を集めてライブをしたぐらい。たまたまヤマハのスタジオで練習していたら、スタジオの人が『EastWest』ってコンテストに応募してくれたんです。パンクをやってるのにヤマハかよ、どこが反体制だよって話なんだけどね。
そのときに、うじきつよしの『子供ばんど』が優勝して、うちらが準優勝みたいな。それで青田刈りみたいな感じでレコード会社が来て、とんとん拍子でデビューが決まって。そこもパンクじゃなくて、普通にエリートコースで、ストリートじゃねーじゃんと(笑)。でもバイトしないで金もくれるし、うまいものを飲み食いできるし最高だなと。
――過激な歌詞が圧倒的な支持を集めました。
藤沼 20歳ぐらいの脳みそだからさ、そのぐらいの年齢って訳が分かんなくて、なんかムカつくじゃない。彼女ができないとか、欲しい物が手に入らないとか、金持ちがムカつくとか、満員電車が嫌だとか。それって自分の不甲斐なさを当たり散らしているだけなんだけど、それがロックやパンクと相性が良くて、そこにみんな共感して、魅力を感じてたんじゃないかな。
――しかも、ファーストアルバムは10万枚の売り上げを記録しましたね。
藤沼 当時は「俺たちって才能あるんだな」って勘違いしていたけど、今考えてみると、大手のメジャーなレコード会社だったから、それなりに宣伝をして、いわゆるマーケティング戦略をしていたのも大きかったんだよね。今回の映画のテーマにも繋がってくるんだけど、なぜ『GOLDFISH』ってタイトルを付けたかと言うと、金魚って観賞用に作られたものでしょ。見られるための存在で、煮ても焼いても食えない。それってロックもアイドルもダンサーも含めて、エンターテイメントという大きなくくりで金魚じゃないかと思ったんです。
ふじぬま・しんいち 1959年11月7日生まれ。1980年、アナーキー(亜無亜危異)のギタリストとしてデビュー。独自のギタースタイルは評価が高く、100枚以上のアルバムに参加。現在も精力的にライブ活動を行っている。

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