
『天空の結婚式』
監督/アレッサンドロ・ジェノヴェージ
出演/ディエゴ・アバタントゥオーノ、モニカ・グェリトーレ、サルヴァトーレ・エスポジト、クリスティアーノ・カッカモ
配給/ミモザフィルムズ
緊急事態宣言の再発出によって、また気軽に出かけられない日々になりました。いくつかの邦画や大作の公開日も延期され、私が映画コーナーを担当している『王様のブランチ』(TBS系)もリモートに。内容も、劇場公開作品ではなく、家で楽しめる配信やDVD作品に切り替わりました。
ただ、前回の緊急事態宣言でもそうでしたが、こんなときは、公開延期が少ないミニシアター系の作品が私たちに元気と勇気を運んでくれます。〝どの作品が実話読者にオススメかなぁ〟といろいろ見てたら、とんでもなくキュートでハートウォーミングな1本に出会いました。同性愛をテーマにした『天空の結婚式』。単なるコメディー作品かと思いきや、冒頭の入り込みも楽しく描かれ、人間像も伝わってくる、粋なヒューマンドラマなんです。
とにかく、男同士の恋だけに問題がいっぱい。アントニオが結婚報告と同時に、ゲイであることを両親にカミングアウトしなければいけないし、恋人のパオロも紹介しなくてはなりません。2人で里帰りすればいいのに、ひょんなことから一緒について来た女性とオジサンによって、すべてがややこしくなり、それがすごく面白いのです。
『天空の城ラピュタ』を思わせる美しき景色
さらに、男同士の恋愛が全く理解できない親世代の振る舞いにもハラハラします。こういうときの〝お母さんの強さ〟がとても気持ちよく、憧れてしまう。〝渋るお父さんに強く言えるのはお母さんだけ!〟〝ヨーロッパの女性は強い!〟というイメージは、決して外国だけでなく、きっと日本の家庭もこんな雰囲気なのでしょうか…。
そして、私が最もワクワクしたのは、アントニオの元恋人が女性だったこと。このオンナが曲者で、アントニオのことを全く忘れられなくて、未練タラタラで近づいて来ます。マジで、同性としてかなりウザい存在です。
2人、いや4人のややこしい旅や元カノ騒動があっても、心がハッピーになる1つの要素として見逃せないのが美しい景色です! イタリアのラツィオ州に位置する、あの『天空の城ラピュタ』のモデルとも言われる分離集落チヴィタ・ディ・バニョレージョでの結婚式だからこそのスペシャル感。さらに、イタリアの空気や、式のレイアウトなどなど、どれをとっても最高の演出です。驚くのはそれだけではありません! ラストでビックリするほど、いきなり作風が変わります。この変化球は私好み! 思わず、両手を挙げて映画館から出ちゃいました!
LiLiCo
映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。
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