昨今のジビエ(野生鳥獣肉)料理ブームでは欠かせないイノシシが〝豚熱〟感染拡大で激減し、猟師やジビエを扱う飲食店、さらには〝猪鍋〟が名物の温泉旅館などを悩ませている。
イノシシの「3大猟場」の一つ、静岡県にある天城山の山中では昨年来、イノシシの気配がなくなった。
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「例年、11月から翌年3月の狩猟期間中には100頭以上のイノシシが捕獲されていたんですが、2020年以降は4割以下に減った。そのため、県内のジビエ加工業者やジビエ料理店は経営危機に立たされていますよ」(フードライター)
静岡県によると、県内のイノシシ肉の処理実績は2018年度が677頭なのに対し、豚熱拡大後の20年度は401頭に激減。特に、豚熱感染が拡大した同県中西部の市町で大きく落ち込んだという。
「豚熱とは、豚熱ウイルスにより起こる豚、イノシシの熱性伝染病で強い伝染力と、高い致死率が特徴です。感染豚は唾液、涙、糞尿中にウイルスを排泄して、直接、間接に感染が拡大していく。ただ豚熱は豚、イノシシの病気で人に感染することはありません。感染した豚の肉を食べても人体に影響はない。豚感染の肉が市場に出回ることもありません」(獣医師)
害獣のイメージも強いが…
イノシシといえば近年、田畑を荒らす害獣のイメージが強くなっているが、猪肉は縄文時代から食されてきた貴重な食材だ。同じくイノシシの3大猟場である岐阜県郡上市でも、豚熱が原因で激減しているという。
「郡上市では冬の間の猪鍋が極上のジビエ料理として長年、愛されてきた。今期は昨年11月15日が狩猟解禁日だったんですが、イノシシがいない。原因は2018年に岐阜県内で発生した豚熱ですよ。26年ぶりに国内で確認されて、多くの豚が殺処分されました。その豚熱が野生のイノシシにも感染したようです」(前出・ライター)
3大猟場の中で〝ぼたん鍋発祥の地〟とされる兵庫県丹波篠山市でも、豚熱の感染拡大に伴い地産地消が困難になっているという。
豚熱感染の猪突猛進は、何ともやっかいだ。
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