インタビュー山田邦子〜唯一、天下を取った女性ピン芸人…『M-1』きっかけで再ブレーク!?
かつて週14本ものレギュラー番組を抱え、「唯一、天下を取った女性ピン芸人」といわれる山田邦子さん。昨年12月に『M-1グランプリ』の審査員を務め、久しぶりに脚光を浴びた。さらにさまざまなメディアで取り上げられるなど、再ブレークの兆しを見せる女帝の、今後の展開は?
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――芸人、女優、歌手、小説家、最近では長唄の名取でもある山田邦子さんです。引き出しが多すぎて、どこから話をうかがっていいか困ってますが、『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)のことからお聞きします。番組最年少だと思いますが、当時、邦子さんはおいくつだったんですか?
山田邦子(以下、山田)「20歳ですね。明石家さんまさん、島田紳助さん、渡辺正行さんたちが25歳くらい、ビートたけしさんが30ちょいでしたね。私は師匠もいないし、スクールにも行ったわけでもないポッと出の普通の子だったんですよ。『誰この子?』っていう素人あがりの私に、こんないい番組でいきなりコーナー持たせてくれるって、プロデューサーさんたちもずいぶんな賭けをしたなと」
――邦子さんは、どんな経緯でレギュラーに?
山田「短大の頃に素人勝ち抜き番組に出まくってたんですよ。その一つ『笑ってる場合ですよ!』(フジ系)のプロデューサー横澤彪さんに『新番組をやるから出てくれないか』って誘ってもらいました。ふらっとスタジオアルタに行ったら横澤さんに再会して、お話をいただきましたね」
毎日仕事で運命共同体って感じ
――偶然、再会したことでご出演につながったと。山田「『笑ってる場合ですよ!』で4日勝ってもう1日勝てばチャンピオンというときに、先に決まっていたドラマ『野々村病院物語』(TBS系)の撮影日と被ってしまい出られなかったんです。それで『最後の日に来なかった子じゃん』って覚えててもらったんです」
――『ひょうきん族』時代の思い出があれば、ぜひ。
山田「『ひょうきん絵描き歌』とものまねのコーナーもやってたから、ネタを作らなきゃならないですからね。本番終わると『お疲れさん、来週の資料はこれ』と真似する歌手のビデオを渡される。そこからネタになるまで練習しなきゃなんないんですよ。似てればいいってわけじゃなく、面白くないといけないから」
――それは大変ですね。
山田「当時はもう、毎日なんかネタ考えてましたよ。ずっとあれどうかな、これどうかなと。でも刺激的で面白かったですよね。だって横にたけしさんやさんまさんがいるわけだし。収録が終わったらみんなで朝まで遊んで、朝からまた仕事っていう感じでしたよ。お金も持ってないし、時間もないし、なんかわーわーやってましたね。毎日仕事だから休みもないし、運命共同体って感じでした。ちょっと時間があると『俺たちはこれでいいんだろうか』みたいなことをみんなで話し合ったりとか、青春っぽいこともありました」
――『ひょうきん族』で人気に火がついて活躍の場をどんどん広げていかれましたが、初めて自分がメインの番組を持たれたのは?
山田「1985年くらいかな、『ひょうきん族』の中期ですね。いろんな仕事が始まって、桂三枝(現・文枝)さん、高島忠夫さん、(横山・西川)やすしきよしさんの番組でサブをやったり、時代劇をやったり、映画に参加したり、コマーシャルに出たり。大変でしたけど面白かったですね。自分の番組は何だったかな〜」
「やまだかつてない」大ヒット
――邦子さんの冠番組といえば、やっぱり『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』(フジ系)ですか?山田「『やまかつ』はそうですね。ちょうど『ひょうきん族』が終わった翌週にスタートしたんですよ。だから『ひょうきん族』のメンバーが最初はずいぶん助けてくれましたね。さんまさんですら、ものまねで出てくれましたから」
――出演者も豪華でした。
山田「友達の千ちゃん(大江千里)と高岡早紀ちゃんと私がレギュラーで、『すごいおしゃれでかっこいい番組が始まった!』って思いました。番組スタッフも『ひょうきん族』の横澤班に音楽好きのディレクターがいて、気心知れたチームでしたし」
――邦子さんのカラーが前面に出ていたのも印象的です。『やまだかつてないWink』とか。
山田「すごい人気だったんですよ。もともとWinkの相田翔子ちゃんのまねをしてて、鈴木早智子ちゃん役は最初は人形だったんです。それが『サチコを探せ』って企画になって、小林幸子さんに行ったんですよね。あれ、小林さっちゃんになってたら展開がまた違っていたでしょうね〜」
――『さよならだけどさよならじゃない』は大ヒットしましたね。卒業式の定番ソングにもなりました。
山田「贅沢にも私が作詞させてもらってね。全日本有線放送大賞の新人賞をいただいた『邦子のかわい子ぶりっ子(バスガイド編)』の次にヒットしました」
――邦子さんの定番ネタですね! …でも、マルチプレイヤー邦子さんの略歴紹介ですら、この調子だと誌面が足りませんが、邦子さんが「これだけはやりたかった仕事」って何ですか?
山田「自分から出たいって言ったのは1回くらいです。『ママとあそぼう!ピンポンパン』(フジ系)のお姉さんがやりたかったんですよ。横澤さんがスタッフだったことは知ってたんで、『次のピンポンパンのお姉さんにさせてください』って直談判しました。すごく笑ってたから『採用だな』と思ったら、『保育科の学生がやるから、ひょうきん族の中でやんなさい』と。で、できたのが『ひょうきん絵描き歌』。よく見ると、ピンポンパンのお姉さんと同じ格好してるんですよ。悔しかったから(笑)」
――そんな逸話が!
山田「それに、当時は『パロディーは本物より精密にできてないとダメだから』って言って、チラッとしか映らないセットや衣装も本気で作ってました。あれはお金かかっていたと思いますよ。今は番組予算が減っちゃってますけど、私たちのせいかなと思います。使い切っちゃったんじゃないですかね、お金を(笑)」
M―1で、なんだこのおばさん
――今の番組といえば、昨年は『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の審査員をされて話題になりました。山田「『M-1』は私も大好きだから見てました。出てみてびっくりしたけど、世の中みんな審査員なんですよ。家で自分も審査員になって、楽しみに点数をつけてるんですよね。それと、私がつけた点数があまりにも違ったので、『なんだこのおばさん』みたいになって」
――SNSで騒いでいた方もいたようですね。
山田「『素人を呼ばないで!』とかね。でも、それを『山田邦子を知らないでお笑い語ってるなんてお前こそ素人だな』みたいなフォローしてくれる人がどんどん入ってきてましたね」
――M-1については熱い方が多いですからね。
山田「それだけ関心があるわけですよね。これはすごい熱量だなと思って、嬉しくなっちゃった。せっかく出たのに、いたんだかいないんだか分かんなかったより全然良かったですよ」
――『M-1』出演で若い世代とも繋がりましたね。
山田「孫ぐらい年が離れてる鬼越トマホークとかとはめちゃくちゃ仲良くなりましたけど、私のことは平気で『クニちゃん』呼ばわりですから(笑)」
――ガンガン攻めてくる若手、いいですね(笑)。
山田「亡くなった渡辺徹がね、サンドウィッチマンとかお笑いの子たちをすごく可愛がったんですよ。笑福亭笑瓶もそうでした。徹なんて俳優さんだったのに、お笑いに引っ張り込んだのは私だからね。それをずっとやってたんだなと思ったら、申し訳ないですね。私、テレビが忙しくて何もできなかったからツケが回ってきましたよね。次は私がやりたいなと思います」
――後進の育成もさることながら、芸人としてもご活躍を期待してます!
山田「毎年9月25日にふざけたことをしてるんですけど、今年はバスガイドネタの集大成をやろうと考えてます。実際にバスでツアーを組んで、2時間くらいかけてやりたいなと。全部ネタで」
――いいですねえ!
山田「動けなくなったら終わりだから、動けるうちはやりますよ。あとはやっぱり若い人と付き合っていかないと、最後にお棺持ってもらえないもんね(笑)」
やまだ・くにこ 1960年、東京都出身。高校生の頃より数多くの素人参加番組に出演。『笑ってる場合ですよ!』で得意のバスガイドネタを披露しチャンピオンになり、芸能界デビューを果たす。以降は数多くのバラエティー番組やドラマに出演しているほか、執筆、作詞活動も行い、「唯一、天下を取った女性ピン芸人」と呼ばれている。
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