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“お好み焼き屋”に参入した自動車メーカーも!「異業種参入」が最盛期〜企業経済深層レポート

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経済界で「異業種参入」なる言葉が注目されて久しいが、近年これが加速。日本全国で、異業種参入ラッシュが巻き起こっている。

経営コンサルタントがその実態を解説する。

「古くは、フィルム市場の縮小から2006年に化粧品業界に参入した『富士フイルム』や、コロナ禍における『シャープ』『日清紡』などのマスク業界への参入が注目を集めたが、今ではあらゆる業界にゲームチェンジの波が押し寄せている。コロナ禍でさまざまな価値が大転換し、生き残りをかけて別分野に進出する大きなうねりが、経済界に拡大しているのです」

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例えば、作業服専門チェーンの『ワークマン』は、デザイン性を重視した新業態のファッションブランド、『ワークマン カラーズ』1号店を今年9月に都内に開店予定。アパレル業界に殴り込みをかけるという。

「作業服専門だった『ワークマン』は、商品の機能性と安さがウケ、アウトドアやスポーツウエア、シューズなども販売。最近では女性専門店『#ワークマン女子』も展開している。ところが、今回はファッション性を重視したアパレル業界に進出する計画で、王者『ユニクロ』の牙城を揺るがす動きを見せているのです」(アパレル業界関係者)

一方、これとは逆にアパレル業界から異業種に切り込んだのは、大阪に本社を置く『アーバンリサーチ』だ。70年代にジーンズショップから事業拡大した同社は、今や一部に熱烈なファンを持つアパレル企業。以前からアウトドアファッションも取り扱っていたが、その流れから2019年に長野県茅野市の蓼科高原にキャンプ場を立ち上げた。

コロナ禍の参入で火が付いた

「八ヶ岳の麓にある同社運営のキャンプ場には、温泉旅館をリノベーションした小粋な宿泊用のロッジやキャビンがあり、温泉やカフェレストラン、Wi-Fiも完備。キャンプはもちろん、テントなしでも宿泊できる。そのため、企業研修などにも使える次世代型キャンプ場として人気を博しているのです」(事情通)

また、コロナ禍で人気に火が付いたアウトドアには、あの企業も参戦中だそう。

「それが、家具業界の覇者『ニトリ』です。こちらは業態替えで参入というわけではないが、21年からアウトドア関連商品を一気に増やした。中でも折り畳み可能&持ち運びに便利な『バタフライチェア』は、5000円前後〜と安さがウケて大人気。21年だけで4万台を売り上げた。日除けに使える『ワンタッチサンシェルター』も3000円台で、キャンプに限らず近所の公園でも使えると評判です」(経済評論家)

ちなみに、2022年度の国内のアウトドア用品の販売、施設の利用、グッズのレンタル市場の合算は、対前年比106.5%増しの約3475億6000万円。キャンプ場の稼働率も大幅に伸びていることから、これらをはじめとする企業の新規参入が相次いでいるのだ。

一方、自動車業界の一翼を担うメーカー『マツダ』の車を販売する『広島マツダ』は、なんと車にプラスして「お好み焼き屋」を始めたと話題になっている。

飲食店関係者が言う。

「『広島マツダ』は昨年1月末、広島と東京で8店舗を展開するお好み焼き店『みっちゃん総本店』の運営会社『ISE広島育ち』の全株式を取得。経営に乗り出したのです」

また、旅行業大手の『HIS』は、コロナ禍の2020年10月に埼玉県川越市にそば屋を出店。『満天ノ秀そば』と銘打ったこのそば店は、今では都内や埼玉などで4店舗を展開中だ。

必ずしも成功するとは限らない

「同店では国産のそば粉を使った十割そばを打ちたて、茹でたてで提供しており人気です。また『HIS』は昨年から子会社が農業にも進出。ミニトマトやとうもろこし、グレープフルーツなどを生産したり、21年には温泉旅館の経営にも着手した。そのどれもが、旅行業に次ぐ新たな事業の柱を育てるのが狙いなのです」(シンクタンク関係者)

同じく変わり種といえば、目薬や胃腸薬で知られる『ロート製薬』は、今年1月15日に大阪・梅田にカフェ&レストランを開店。『ロートレシピ』という名のこの店は「体に良い健康食を提供する」のがコンセプトで、サラダやハンバーグ、スイーツやドリンクなどを提供しているという。

さらに、ここにきて『大日本印刷』はスマホ向けのオリジナル縦読み漫画をアプリで配信開始。今後はAI翻訳などにも参入していく予定という。

ところで、ここで押さえておかなければならない点は、異業種に乗り出せば必ず成功するとは限らないことだ。経営コンサルタントが指摘する。

「ユニクロは02年ごろに野菜販売に乗り出したが失敗&撤退した過去を持つ。異業種参入は十分な準備を積まないと、本業までつぶしかねない危険もはらんでいます。また、加えて今後は海を越えて我が国の産業に異業種参入してくるケースも増えてくるはず。注目されるネット通販『アマゾン』の日本の薬局事業への参入は、まさにその先兵と言えるかもしれません」

グローバル化の波も押し寄せ、異業種参入は今後さらに白熱しそうな雲行きだ。

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