(画像)Alexander Khitrov / Shutterstock.com
(画像)Alexander Khitrov / Shutterstock.com

北朝鮮“宣戦布告”!? 裏で金正恩の娘「主愛」を動かす叔母・与正が企む皇族政治

北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正党副部長は3月7日、朝鮮中央通信を通じて出した談話で「北朝鮮が太平洋など公海に向けて発射実験を行った戦略兵器について、米国が迎撃する軍事的対応に出た場合、北朝鮮に対する明白な宣戦布告と見なす」と警告した。


【関連】米国に丸裸にされた北朝鮮…金正恩・愛娘披露でも容赦なく進む「斬首作戦」 ほか

また、同じく朝鮮中央通信は10日、同国が前日に実施した「火力襲撃訓練」により、戦争に対応する能力を証明したと報じた。これを視察した正恩氏は、「現実の戦争」に向けて訓練を強化するよう朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に命じたという。


「与正氏の談話は、韓国メディアが3月6日に報じた『北朝鮮が太平洋に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射すれば、即刻撃墜する』という米インド太平洋軍司令官の発言に反発したものです。正恩氏による『現実の戦争』への命令は、与正氏の露払いに乗じて発せられたもので、最近の北朝鮮の〝兄妹政治〟をよく表しています」(外交関係者)


与正氏は、党副部長という職位にふさわしくないほど前面に登場し、その発言によって最高指導者である兄、正恩氏の意中を外部に伝える役割をしている。また、与正氏がやたらと攻撃的なコメントをするのは、明確な理由があるからだという。


「国内経済が完全に麻痺している北朝鮮において、特に食糧不足は体制への不満や批判に通じやすい。こうした鬱憤を外の世界に向けることが与正氏の目的なのです」(北朝鮮ウオッチャー)

“女帝”与正氏が主愛を動かしている!?

2018年9月、平壌で開催された通算5回目の南北首脳会談に出席した人たちの間で、「すべての道は与正に通じる」という言葉が広まったことがある。

「与正氏には『北朝鮮を自分が動かしている』という自負が見え隠れします。談話の中に『私の考えでは』という表現を入れて発表できるのは与正氏だけ。ほかの北朝鮮高官には見られないことで、その大きな役割と地位を表していると言えます」(同)


最近の正恩氏は、第2子の金主愛や妻の李雪主氏と連れ立って、公式の場に姿を見せる機会が増えている。これをもって〝兄妹政治〟から転じ、日本や英国をまねた〝皇族(王族)政治〟を志向しているとみる向きもある。


「主愛の登場は北朝鮮の体制を率いる中心勢力が企図したもので、むしろ〝兄妹政治〟を強固にするために利用されている節があります。主愛が登場したときの映像を細かくチェックすると、周囲の大人が彼女に指示していることが確認できる。つまり、事前に準備された脚本通りに、主愛を操っているということで、それを主導しているのが先鋭化した〝女帝〟の与正氏なのです」(同)


現在、韓国では正恩氏の家族について、情報の収集に余念がない。


「北朝鮮の金ファミリー情報は秘匿された部分が多く、そのため韓国の情報機関である国家情報院(NIS)でさえも把握するのが難しい。それでもNISは国会報告で、正恩氏と雪主氏の間には2010年生まれの長男、13年生まれの主愛、17年生まれの次男という3人の子供がいることを明らかにしています」(在韓の日本人ジャーナリスト)

数々の憶測が流れる後継者事情

では、なぜ儒教色が強い北朝鮮で4代目の後継候補が長男ではないのか。専門家の多くは「だからこそ表に出さない」という意見で一致しているが、もう少しうがった見方をしている韓国メディアもある。

「正恩氏は9歳からスイスに留学しており、韓国当局は『先例を踏襲して12~13歳の長男は海外にいる』とみていました。ところが、平壌に住んでいるとの情報が出たことで、長男はまだ成長過程にあり体格が小さいという説、さらには虚弱体質ではないかという説が唱えられています」(同)


北朝鮮メディアは主愛を「尊貴なお子様」と呼ぶ。正恩氏の叔母である金敬姫氏は1958年、北朝鮮を離れる中国人民支援軍(中国共産軍)の歓送行事に花童として登場した。また、主愛の叔母である与正氏は2011年、金正日総書記の葬儀に喪服姿で初めて姿を現した。地味な2人に比べると、主愛の扱いはまったく異なる。


「見るからに健康優良児で恰幅がいい主愛は、金ファミリーの威厳を示す存在として適任です。取りあえず正式な後継が決まるまで、北朝鮮の未来を担う存在として内外にアピールしていくでしょう」(前出・北朝鮮ウオッチャー)


3月13日に始まった米韓合同軍事演習や4月に見込まれる韓国の尹錫悦大統領の訪米と前後し、北朝鮮が大規模な軍事演習を行う可能性が指摘されている。


また、正恩氏は近々「国防力発展5カ年計画」に基づき、固体燃料式の新型ICBMの発射や軍事偵察衛星の打ち上げに踏み切るとみられる。おそらく、その場に主愛は現れるだろう。


目下のところ主愛が、北朝鮮における核・ミサイル開発と「白頭系統」の第4世代を象徴していることは間違いない。まさしく〝核の申し子〟である。