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『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』(新潮文庫:塩野七生 本体価格〈上900円〉〈下850円〉)~本好きのリビドー/悦楽の1冊

『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』(新潮文庫:塩野七生 本体価格〈上900円〉〈下850円〉)
『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』(新潮文庫:塩野七生本体価格〈上900円〉〈下850円〉) (C)週刊実話Web

上下巻併せて900ページ近くを読み終えてつくづく感じたのは、とにかくローマ法王(と法王庁)がいかに長らく歴史的に厄介な存在だったか、という点だ。

アミン・マアルーフ『アラブが見た十字軍』(ちくま学芸文庫)などの著作により、とかく日本では聖地奪回の旗印の下、殉教の戦いのように語られてきた西洋キリスト教諸国の攻撃と略奪ぶりがどれほど野蛮だったか、当時の実態が明らかになってきて、各国王に檄を飛ばしてその侵略行動を煽りに煽ったのがローマ法王だ。

おまけにキリスト教をローマ帝国の国教と認めたコンスタンティヌス大帝が、全ヨーロッパの半分を教会に譲る(!)と記したとされる「コンスタンティヌスの寄進書」なる代物を事あるごとに振りかざして、信仰の世界のみならず俗界においても各国領土の潜在的主権者は俺だとばかり、国王の首まですげ替えようと陰に陽に圧力をかけてくるのだから、たまったもんじゃない。

中世という時代と格闘した生涯

ちなみに件の「寄進書」が真っ赤な偽物、とんだ捏造文書だと科学的に証明されるのに15世紀まで待たねばならなかったと聞けば、余計嘆息も重くなろうもの。

本書の主人公、13世紀の神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ二世はそんな海千山千の歴代法王たちと、時に妥協し、時には徹底的に戦いつつ、法治社会と政教分離の原則が息づく現代に通じる立憲君主制国家の建設に邁進する。鷹狩りと学芸を愛し数カ国語を自在に操って、遂にはイスラム側と交渉の末にイェルサレムの無血返還まで実現させた彼を、悪名高い異端審問所を創設する法王は血を流さぬ取引は神への冒瀆と糾弾するのだからやりきれない。商人出身の数学者フィボナッチなど皇帝を取り巻く群像にも興味津々。

(居島一平/芸人)

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