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蝶野正洋『黒の履歴書』~男女や上下関係などによる“支払い”論争

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

ある女性タレントが「デート代は男が払うべき」と発言して物議を醸した。その理由は「女性はそのデートのために洋服、メイク、美容代が必要だから」ということのようだ。このつぶやきに対して「男性だってファッションにカネがかかってる」とか、「そうかもしれないけど、それを女性側から言うのはおかしい」など、さまざまな意見が出ており、どうにも決着がつきそうもない。


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確かに、ひと昔前はデート代や食事代は男が払うというのが当たり前だったかもしれない。でも、さすがにいまの時代はもう違ってきているとは思うよね。

欧米は男女同権の考えが根付いているから、そもそもこういう論争は起きない。俺がマルティーナと交際していた約40年前のドイツでも、俺が飲食代をまとめて払おうとすると怒られた。当時はお互いにカネを持ってるわけじゃなかったけど、基本は対等。自分で飲んだもの、食べたものは自分で払うという感覚が根付いていた。レディーファーストという文化はあるけど、それは女性の分も支払うということではない。それが日本では男性が当たり前に全部払うという風潮に変わってしまったのかもしれない。

男女よりも難しいのは、仕事関係だよね。日本には「接待」という文化があるし、上司は部下に奢るものという考えも根強い。

ただ、俺は昔から接待はあまり好きじゃないんだよ。スポンサーから食事に招待してもらっても気を使うから、あんまり飯がうまくない。実際、ご馳走になってたら、口に合わない料理でも「美味しいです」って言わなくちゃいけないだろ?

器量を見極めるために試す!?

それとプロレス業界は体育会系だから、先輩が後輩に奢るみたいな風潮があると思われがちだけど、意外とそういうのはないんだよね。特に海外ではみんな個人主義で、そもそも先輩後輩で飲みに行かない。ただ、ボス風を吹かせたいやつというのはいる。リック・フレアーがそういうタイプで、試合後にバーに行って、そこでレスラーたちが飲んでたら、その分も全部払ったりする。まぁ、ワルのやり方というか、マフィアスタイルだよね。

リーダーっぽい雰囲気のハルク・ホーガンは、逆にそういうことをしないらしい。上も下も作らない、みんな仲間という関係性を大事にしたいんだろうね。

猪木さんは、スポンサーやタニマチと飲むときは、相手の財布をどれだけ開けさせるかを試しているようなところがあった。1本何十万円もする高いワインをバンバン空けたりするから、そばで見ていてハラハラするくらいだったけど、あれは猪木さんが「お前は俺にどれだけ出せるんだい?」と、タニマチの器量を見極めていたんだと思う。

似たようなことを仕掛けてくる女性もいる。1万円のものを買ってあげるという話だったのに、急に10万円のものをおねだりしてきたりする。あれは一種の女性的な本能で、そういう甘え方なんだと思う。そこで男は本能的に女性の要求に応えたくなるらしいけど、俺は高価なモノを買ったところで達成感よりも悔いしか残らないタイプだね(笑)。

まぁ、奢る、奢らないなんて見栄を張り合ってるうちが華だよ。結婚して夫婦関係になったら、どうせカミさんに財布握られるんだから。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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