『ゴマフエダイ』沖縄県石垣市/桃里産~日本全国☆釣り行脚
3月になり、少しずつ春の兆しを感じられるようになってまいりました。とはいえ、まだまだ寒い日も多く、今年の冬は大寒波もあってことさらに寒かったようにも感じます。もう寒いのは飽きました。暑さに残暑があるように、寒さにも残寒あり。そして、夏に避暑地があるように、冬に避寒地あり。ということで残寒から逃げるべく沖縄県は石垣島にやってまいりました。
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書いておいてなんですけど、念のため「避寒地」という言葉があるのか調べてみたら、本当にあるんですね。さらに「残寒」という言葉もあるんですね。ワタクシ知りませんでした。「残汁」ならよく出しているので知っていたのですが、人生何事も勉強ですね。
さて、石垣島といえば南国の離島ですからさまざまな大物釣りでも人気の島です。でも、道具も腕も〝ちゃんとしていない釣り人〟のワタクシがそのような真っ当な大物を狙えるわけもなく、取りあえず手堅く何かが釣れそうな河口域を、いくつか回ってみることにします。沖縄本島もそうですが、南国の河口域というのはカニやら小魚やら何かと生物層が豊富なので、それらをエサにする魚が入ってくることも多いんですな。
島内にいくつか流れる河川の河口を見て回りますが、マングローブ林に阻まれ水際に出られなかったり、干潮で水がなかったりと、なかなか適当な釣り場がありません。都市化の進んだ沖縄本島の市街地エリアと比べて、自然が残る石垣島の汽水域。手軽に竿が出せる釣り場は結構限られます。
護岸の上から川を覗いてみると、干潮とあってかなり浅い様子ではありますが、暗くなってしまえばなんとか釣りにはなるでしょう。早速、安物のコンパクト竿にオモリとハリを付け、内地から持参したエサのアオイソメをハリに掛けて、河口の中ほどに仕掛けを投げ込みます。あとは竿先に発光体を付けてアタリを待つのみ。と、ほどなく発光体が揺れ、竿を手にすると元気な手応えで釣れたのは小さなゴマフエダイです。
当地ではカーシビー、あるいはマングローブジャックとも呼ばれるゴマフエダイは、その激しいファイトから沖縄では人気のターゲットです。とはいえ、手のひらにも満たないこの小さなサイズでは、さすがに持ち帰って肴にするわけにもいかずリリース。エサを付けて再び仕掛けを投げ入れます。
その後も飽きない程度にゴマフエダイからのアタリがありますが、大きさは一様に手のひら未満のリリースサイズ。でも、いいんです。どこかでのんきに鳴くカエルの鳴き声や虫の声、初夏の夜釣りを思わせるような心地よい風に吹かれて、川辺でアタリを待つだけでも心が癒やされます。
「なんだか初夏の夜のウナギ釣りみたいな風情だなぁ」などと、のんびり竿先の発光体を眺めていると、いきなり竿先が絞り込まれるとともに護岸に立て掛けてあった竿尻が浮きました。今までの小さなゴマフエダイでもそれなりに元気なアタリではありましたが、さすがに竿尻が浮くことはなく、慌てて竿を掴みます。
油断禁物指入れで流血
すでにハリ掛かりをしているようで、今まで以上に鋭い手応えが伝わります。とはいえ、竿尻を浮かせた割にはそこまでの重量感ではなく、手応えを楽しみながら抜き上げたのは20センチチョイのゴマフエダイ。快適な夜釣りが満喫でき、まあ、今日の状況ではこのへんがいいところでしょうと、これにて竿を納めることにしました。若魚のうちは河口域で生活。そして大きくなると海に出るゴマフエダイは、海では80センチクラス、河口でも40センチクラスの実績を耳にします。今回のように20センチチョイですら竿尻を浮かせるのですから、まともな大きさであればワタクシなんぞが通用する相手ではないかもしれません。そしてこの魚、顎の力も相当強く「この程度の大きさなら…」と口に親指を入れて持ったところ、ガッツリ噛まれて親指の爪の付け根から流血しました。
そんなゴマフエダイを今回は塩と泡盛で煮付ける「マース煮」で賞味。美味で知られるフエダイと同じフエダイ科だけあり、小さくても白身らしい旨味が濃くて美味。マース煮なのでことさらに風味がしっかりと感じられ、沖縄らしい肴を楽しめたのでありました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。
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