社会

東日本大震災から12年…まだ終わっていなかった?今後も誘発地震が起こる可能性

(画像)Roman Samborskyi / shutterstock

大地震に見舞われたトルコ南部で、2月20日にまたもマグニチュード(M)6.3の地震が起き、これまでに6人が死亡、294人が負傷した。

この地震は現地時間の同日午後8時4分に発生。2月6日に起きた二度の大地震の際に避難し、家財道具を取りに一時自宅に戻っていた人々を襲ったのである。


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トルコ政府は今回の地震を「以前起きた大地震の余震ではなく、大地震に誘発されたもの」と発表したが、そもそも同国は日本と並ぶ地震国。半月前の大地震でも地下に横たわる4つのプレートと長い断層が原因で、被災したほどなのだ。

外信部の記者が言う。

「ここのところのトルコの地震を整理すると、まず2月6日早朝にM7.8の巨大地震が発生。同地震は『東アナトリア断層』と呼ばれる地殻が8メートル以上ずれたことで起きたが、その後エネルギーが断層の別の場所にたまり、9時間後にM7.3の誘発地震が発生した。つまり今回の地震は二度目の大きな誘発地震なのです」

ただ、それも無理もない話と言わざるを得ない。実は最初に起きた大地震は、1995年に起きた「阪神大震災」(M7.3)の約20倍ものエネルギーを解放したといわれており、直下型としては世界最大級とみられているからだ。

「しかも、現地の政府機関が公開した航空写真によると、二度目の地震では震源地付近で約9.1メートルもの地表のずれが確認されている。内陸地震としては、こちらも世界最大級のずれだったのです」(科学ライター)

もっとも、今回の地震をトルコ政府が「誘発地震」と発表したことが、我が国地震関係者らの注目を集めている。2011年に起きた「東日本大震災」の発生日、3月11日が間近に迫っているが、実はこの誘発地震が起きる可能性がいまだに存在するからなのだ。

「淡路島大地震」は「阪神大震災」の誘発地震か

科学ライターが続ける。

「単純に言えば余震は地震の揺り返し。一方、誘発地震は最初に起きた地震でプレートに歪みがもたらされ、離れた場所で地震が発生する現象です。ただ余震は長期間断続的に、誘発地震は長い時間を経ていきなり発生することもあるのです」

また、武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏も言う。

「誘発地震は巨大地震の震源域から離れた場所で発生することが多く、東日本大震災の誘発地震としては翌日に発生した『長野県北部地震』(M6.7)や4日後に起きた『静岡県東部地震』(M6.4)が知られています。巨大地震でたまったエネルギーの留め金が外れると、さらに別の留め金が外れ…と連鎖していく。誘発地震は巨大地震発生直後に多いが、しばらくして起きることも少なくないのです」

こうした指摘もあるように誘発地震は長い期間を経て発生するケースも多く、例えば2013年に起きた「淡路島大地震」(M6.3)は、その18年前に起きた「阪神大震災」の誘発地震ともいわれているのだ。

また、余震についても興味深いデータがあるという。

「1891年に起き、岐阜・愛知を中心に死者7000人を記録した日本最大の内陸直下型地震『濃尾地震』(M8.0)は、今年で発災から132年がたつ。だが、今も小さな余震が起き続けているのです」(科学雑誌記者)

つまり、「誘発地震」や「余震」には共に長い警戒期間が必要なのだが、気がかりなのは東日本大震災に誘発された大地震や余震が起きる可能性がどれほどあるかということだろう。実は、これにも恐ろしいデータが存在する。

「2021年2月13日に福島県沖を震源とするM7.3、震度6強の地震が起きたが、地元の専門家は震源域の地殻変動やプレートの歪みが蓄積されたとしてその後、誘発地震の警戒を呼び掛けている。そもそも同地震は太平洋プレート内部の深さ約55キロで発生したが、東日本大震災の余震と考えられているのです」(同)

余波は10年では終わらない

東日本大震災は今年で発生から12年を迎えるが、その間に海域を震源としたM7以上の余震が計12回、うち2回が直近5年以内に観測されており、活発な状態が続いている。また、2月25日には北海道釧路沖を震源とするM6の地震が発生したが、これを「3・11の誘発地震」とみる地震関係者もいるのである。

前出の島村氏が言う。

「極端なことを言えば、地下はつながっている。釧路沖の地震にしても、3・11の誘発地震と言えなくもないが、今の地震学では分からないのです。ただ、現在東北沖の地下はプレート同士が押し合い均衡を保っているように見えるが、バランスが崩れて地震の力が外側に働いている可能性もある。力を抑えていた留め金が外れれば、断層の北側と南側で大きな地震が連動する可能性もあるのです」

東日本大震災では宮城県沖の震源域にあるプレート境界部が50メートル以上もずれ動いたが、解放された膨大なエネルギーを考えれば、余震や誘発地震が発生しないという保証はない。

そのため、学識者らは「東日本大震災の余波は10年では終わらない。特に日本海溝の東側では、津波を伴うアウターライズ地震(海底の隆起した部分を震源とする地震)が発生しやすい」と注意を呼び掛けているほど。これが勃発すれば、北は青森から北海道、南は関東にかけて巨大地震が起こる可能性も高いのである。

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