(画像)Alexander Khitrov/Shutterstock
(画像)Alexander Khitrov/Shutterstock

北朝鮮版「大奥」で女同士の争いぼっ発!? 正恩氏が10歳娘を連れ回す“裏事情”

2月18日、北朝鮮が平壌近郊から日本海に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星15型』を発射した。ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)内である北海道渡島大島の西およそ200キロに着弾したとみられ、少し外れれば札幌や函館、小樽などの都市に落ちたかもしれない極めて危険な軍事行動だった。


【関連】金正恩の娘・ジュエの登場で過熱する金与正(実妹)vs李雪主(正室)の権力闘争 ほか

「北朝鮮が金正恩総書記の娘、金主愛(推定10歳)を相次いでメディアに登場させ、日本や韓国の関心を引き寄せていた矢先の出来事でした。こうした硬軟織り交ぜた動きの背景には、〝平壌の大奥〟における女同士の確執があるのです」(北朝鮮ウオッチャー)


正恩氏の妹で対米、対南(韓国)外交をつかさどる金与正党副部長と、正恩氏から厚い信頼を得ている崔善姫外相には不仲説が流れている。崔氏は外相就任前の一時、与正氏によって教化所(刑務所)送りにされたことがあり、この屈辱から今も崔氏は、与正氏に対する敵愾心が強いという。


「もう一つの確執は金日成主席の直系を示す白頭血統の与正氏が、兄の妻として子供を産んだだけの李雪主夫人を見下していることです。その李夫人から見れば〝1号宅(第1側室)〟と呼ばれる玄松月党副部長が、夫と泊まりがけで視察に出かけるのが面白くない。この4人が互いにけん制し合い、水面下で闘いを繰り広げているのです」(北朝鮮情勢に詳しい元大学教授)


正恩氏としては、4人が対立してのっぴきならなくなったため、あえて「5人目」を据えて緊張の緩和を図ったというのが、主愛登場の真相かもしれない。

今年の特別配給は“アメ”だけ…

また、慢性的な飢餓状態と不十分なインフラ整備をごまかすために、主愛を利用したとも考えられる。北朝鮮の穀物生産は、昨年の大規模水害や干ばつで大幅な収穫減に陥っており、餓死者が発生した南部の開城市には、正恩氏が2回にわたり党幹部を派遣したと伝えられる。

「ICBMの発射には1発当たり3000万ドル(約39億円)もかかりますが、これは北朝鮮の全国民1年分のコメの価格に相当します。しかし、米国を中心とする国際社会に対して、北朝鮮としてはより強硬な形で緊張感を高めていくしかないのです」(外交関係者)


北朝鮮では正恩氏の父、金正日総書記の生誕日(2月16日、光明星節)を国民の祝日として盛大に祝うが、今年の特別配給は悲惨なものだったという。


「かつては食品に加え、酒、たばこ、学用品や学生服などの配給が、指導者からの贈り物として国民に下賜されたものですが、北朝鮮の情報提供者によると、今年の特別配給は子供向けにアメ菓子を与えただけだったそうです。ただ、原油不足から、2月に入って1日2時間程度しか来ていなかった電気が、光明星節には5時間以上も供給されたということでした」(同)


主愛が最初に確認されたのは昨年11月18日、ICBM『火星17型』の発射現場を訪れたときで、その後は軍関連の行事などに度々登場。直近では2月25日、平壌市内のニュータウン建設の着工式で「くわ入れ」を行っている。


これらの行事はすべて父の正恩氏が同席しており、一部のメディアは「4代目後継者の準備」として報道した。主愛の写真が新しい記念切手の図案に採用されたり、同じ「主愛」という名前を持つ国民に改名を要求したり、後継者に内定した理由も挙げられている。

後継者ではないからこその露出

「しかし、正恩氏の健康状態は深刻ではなく、『後継準備は早すぎる』という意見にも説得力があります。米韓合同軍事演習が行われると、北朝鮮は対抗上、同規模の軍事演習を行わざるを得ず、なけなしの石油資源を使い果たせば崩壊の危機に直面してしまう。そのため娘を前面に出して、平和を演出しようと必死なのです」(軍事ライター)

また後継者なら国内外から標的にされる可能性があるにもかかわらず、当人を公の場にさらすほど危険な行為はない。つまり後継者ではないからこそ、娘を連れ回しているというのだ。


「未来を象徴する主愛と正恩氏の白頭血統を結び付ければ、核兵器の高度化を通じ、次世代の発展と政権維持、さらには国民の安全が保障されるという都合のいいメッセージを創作できる。この絵を描いたのは、同じ白頭血統である叔母の与正氏でしょう」(同)


いみじくも韓国国防省は、定例の米韓合同軍事演習を3月中旬から実施することを明らかにした。


「与正氏は米韓合同軍事演習を前に『太平洋をわれわれの射撃場に活用する頻度は、米軍の行動にかかっている』と警告しましたが、演習はそのまま先制攻撃に移行できる布陣であり、正直、北朝鮮の中枢部は恐怖におののいています。米政府とは言わずに米軍と表現したのは、過度の刺激を避けるため最低限の配慮をしたからでしょう」(同)


主愛の登場は国内外に対する偽装工作であり、ICBM発射など武力挑発の効果を劇的に高める狙いがある。断末魔を前にした北朝鮮の〝劇場型〟軍事威嚇はいつまで続くのか。