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蝶野正洋『黒の履歴書』~防衛費増大の前に政府がやるべきこと

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

米韓との緊張の高まりもあり、北朝鮮から弾道ミサイルが日本海側に向けて何度も発射されている。2月18日には、北朝鮮から発射されたICBMが北海道から200キロほどしか離れていない日本のEEZ内に落下するという事態も勃発した。


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岸田首相は「厳しく抗議を行った」としながら、「今後とも情報収集、警戒監視といった取り組みに全力を挙げる」と述べるにとどまり、いつも通りの対応というか、弱腰とも思える姿勢を見せている。

最近では、さまざまな監視精度が高まっているので、北朝鮮の基地からミサイルが発射されそうになると、事前に察知できるという。それでも発射そのものを止めることができない、というのがまず問題だと思う。

ミサイルが発射されると、すぐに速報が出るけど、それ以上の動きはとらない。実質的に、どこにミサイルが飛んで行こうが見守るしかないようにみえる。

例えるなら、玄関に最新の監視カメラをつけていて、いざ泥棒が近づいてきたとしてもモニターを見てるだけのようなものだよ。怖いのは実際にミサイルが本土に着弾して被害が出たとしても、この対応が変わらないような気がすることだね。

攻撃を受けたら閣僚会議をして、まずは厳しく抗議。それから各国と調整して、それでようやく報復や経済制裁を考えるというように、他国からの攻撃に対して、日本政府独自の判断だけではまったく動けないというのが現実だと思う。

いま撃ち込まれているミサイルは威嚇なのかもしれない。それでも発射されたら、取りあえず撃ち落とすことができるようなシステムを稼働してほしいよね。

縦割り体制の暴走

中国のものと思われる偵察気球が日本領空でも目撃されているけど、これも現在の法律では何も手を出せないらしい。いま、その要件を緩和しようという動きが出ているけど、ミサイルもこれと同じで、撃墜するためには技術的なことだけではなく、多くの手続きや法改正が必要。だからこそ、いくら防衛費を増大して軍備を拡大しても、実際には撃つことも反撃することもできないということが、内外にバレてしまっている。

防衛問題はセンシティブで、立場によってさまざまな意見がある。それをいまの政府は、横断的にまとめる力がないように思える。

東京オリンピックで、電通など広告代理店が談合を行っていたことが明らかになってきているけど、あれもそんな縦割り体制が生み出した暴走だと思う。

電通という会社は、日本を代表する巨大企業なんだけど、俺の印象では各部署ごとに独立していて、横のつながりが薄い。なので、一つの案件、一つのクライアントの担当になると、ずっとそれをやり続ける。すると、まわりを考えずに自分たちだけに利益が集中するような構造をつくってしまいがちなんだよ。実際に東京オリンピック案件の会議資料に「入札を有名無実化して電通の利益の最大化を図る」などと記されていたというから、これはもはや体質なんだろうね。

ただ、もうそんな時代じゃない。横でちゃんと連携しながらも、素早く対応できる体制をつくる。日本は世界と比べて国力が弱まっているというけど、外交的な瞬発力や発信力というのも鍛え直していかなければいけないだろうね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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