フリー打撃で150メートル弾、投げては156キロを計測するなど、万全に見えるエンゼルスの〝二刀流〟大谷翔平。早くWBCでの勇姿を見たいものだが、懸念されるのが「大会後」。日程、日本人のライバル出現、新ルール改正と、今季も多くの障壁が待ち受けている!
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エンゼルス・大谷翔平の「2年連続開幕投手」が内定した。栄誉ではあるが、その代償は? 今年は大谷にとって、かつて誰も経験したことのない〝超ハード〟な1年となりそうだ。
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を直前に控えた侍ジャパンが2月25日にソフトバンクと練習試合を行い、8対4で快勝した。投打ともに〝手探り状態〟なのは否めないが、来日が遅れている日本人メジャーリーガーたちが合流すれば、また雰囲気も好転してくるだろう。
「残念なことに、カブスの鈴木誠也外野手が左脇腹張りを訴え、出場を辞退することを発表しましたが、NPB組はダルビッシュ有に教わり、話し合いを重ねることで、次のステップへのアイデアが浮かんでくる、と。そしてみんな、大谷と話をするのを楽しみにしています」(ベテラン記者)
その大谷のチーム合流には、栗山英樹監督をはじめ、NPBスタッフの苦労も隠されていた。
「日本人メジャーリーガーが所属するMLB球団に連絡をする専用班もできてしまいました。オフィス中に英語で書かれたFAXが散らばって、まるでアメリカの会社みたいになっているそうです」(球界関係者)
大谷の希望により前倒しに…
エンゼルス側は侍ジャパン合流前に「オープン戦で投げさせたい」と言って譲らなかった。その既成事実を作るように、エンゼルスのフィル・ネビン監督もMLB専門ラジオのインタビューで、大谷のオープン戦出場を明言していた。「連絡係」となったNPBスタッフによれば、当初の大谷の登板予定は現地時間2月28日ではなく、3月1日のブルワーズ戦だった。
2月25日に打撃投手として投げ、翌26日のホワイトソックス戦と27日のSFジャイアンツ戦は「打者出場」。28日は休ませ、3月1日に臨むというものだった。
「実際は、現地時間の28日アスレチックス戦で初登板。対戦相手である藤浪晋太郎投手にとってはメジャーオープン戦初マウンド。藤浪は2回を投げ終え交代。無失点。大谷も2回3分の1の34球でノーヒットピッチングと好調だった。この日本人対決に球場には多くの日本人ファン、報道陣が詰めかけました」(スタッフ)
試合後は、すぐに帰国に向けて搭乗し、その様子は自身のインスタグラムでも公開していた。
しかし、いきなりの出場は、栗山監督が許さないだろう。京セラドームでの6日の阪神戦、7日のオリックス戦での出場も検討されているが、代打かDHでの「打者出場」となるようだ。
「9日の中国戦が侍ジャパンのWBC初戦となります。調整を兼ねて、大谷を『先発兼DH』でいきなり投げさせる案もあるんですが」(前出・スタッフ)
第一ラウンドは、本領発揮とはいかないようだ。
大谷の不遇はこれだけではない。
「ネビン監督は、今季の大谷を『中5日の通常ローテーションで使っていく』と語っていました。開幕戦の対戦チームもアスレチックスなんですよね」(前出・米国在住ライター)
大会後のスケジュールも念頭に…
「いや、大会後もハードスケジュールですよ。侍ジャパンがWBC決勝戦に勝ち上がれば、大谷は美酒に酔いしれる間もなく、すぐにペナントレースに向けて調整しなければ間に合いません」(同)アメリカでのWBC決勝は、現地時間3月21日。30日の開幕戦からネビン監督の言う「中5日」で投げる体に整えるには、24日のパドレスとのオープン戦に登板しなければならない。
21日のWBC決勝は、総力戦となることも予想される。大谷も、DHだけの出場とはならないだろう。
WBC決勝戦から中2日での登板は体力的にも心配だが、パドレスといえばダルビッシュがいる。状況次第だが、侍ジャパンの投手同士の投げ合いとなれば、メディアが放っておかない。精神的疲労も生じるはずだ。
「栗山監督はアメリカでの二次ラウンドに進んだら、各投手の大会後のスケジュールも念頭に入れて起用しなければなりません。佐々木朗希にも開幕投手の可能性が出てきました。千葉ロッテはベテランの石川歩に任せるつもりでしたが、調子が上がらず、白紙となってしまいましたので」(ベテラン記者)
そもそも、大谷の合流が遅れた理由だが、さまざまな事情も絡んでいた。一つは「カネ」だ。
侍ジャパンに選手を派遣するMLB球団は、その年俸額を満額とした保険に加入する。その掛け金をNPB側に「出してくれ!」と迫り、MLB球団側も支払いの確証があるまで動かなかったのだ。
「NPBはその掛け金を集めるのに、かなり苦労したと聞いていますが」(同)
今季からMLBでは「ピッチクロック」なる新ルールも導入される。これは投手が捕手から球を受け取って、走者なしで15秒以内、走者ありなら20秒以内に次の投球を行わなければならないルールで、タイム制限を守れないと「1ボールカウント」が宣告される。
だが、昨季データによれば、シーズンで1000球以上投げたMLB投手の中で、最も投球間隔が長いのは大谷だったのだ。キャンプ、オープン戦で投げ、順応させておきたいというのが、エンゼルス首脳陣の意向だ。
日程、日本人のライバル、新ルール…。大谷の2023年は、誰も経験したことのない超ハードなものとなりそうだ。