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『クロサギ』神奈川県小田原市/早川港産~日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

神奈川県小田原市、冬の早川港にてイワシではないイワシのトウゴロウイワシや、東日本では新顔とも言えるカタボシイワシと戯れた前回。ターゲットの少ない冬に、元気な手応えを楽しませてくれるこれらの魚は、ありがたい限りです。晩の肴には十分な量が釣れたので、日没とともに納竿、これにて帰宅…の、つもりだったのですが、バケツの中でキラキラと輝くイワシたちを見て、ワタクシの中にさらなる欲望が芽生えてまいりました。

【関連】『トウゴロウイワシ&カタボシイワシ』神奈川県小田原市/早川港産~日本全国☆釣り行脚 ほか

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

早川港といえば、港内のブッ込みで小型ながらにクエの実績を時折耳にする、知る人ぞ知る密かなる夢に満ちた釣り場です。夜行性で小魚が好物のクエ。今まさに日没を迎え、バケツにはキラキラと泳ぐイワシたち…。これは狙わぬ手はありません。いつなんどき、何があるか分からぬゆえ、「投げ竿と避妊具は常に携行せよ」という釣りの格言にもあるように、こんなこともあろうかと持っている投げ竿を取り出し、そそくさと準備に取りかかることにします。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

有り合わせの丸セイゴ16号(ハリ)にハリス4号(糸)、これにオモリという単純なブッ込み仕掛けを手早くセット。バケツの中で泳ぐトウゴロウイワシをハリに付けてブッ込みます。そして、これも釣りの格言「竿先ライトとペンライト(夜這い用)は常に携行せよ」に従って持参した竿先ライトを取り付け、あとはアタリを待つばかりです。

10分…20分…30分…アタリません。点検で巻き上げてみるとハリに付けたイワシは全くの無傷です。まあ、名うての高級魚のクエですから、そうそう簡単に釣れる訳もなしと、再び投入して待つことしばし。微動だにしない竿先。こらえ性のないワタクシ、少々飽きてまいりました。

アタリなく志は低きに流れ

そこで作戦変更。万一に備えて、「万能のアオイソメとローターは常に持ち歩け」という釣りの格言に従って、持参したアオイソメを取り出し、1本の竿のエサをイワシからアオイソメにチェンジ。これで少しはアタリが出やすくなることでしょう。

アオイソメに替えてほどなく、ミミンッと竿先ライトが揺れました。「ほれ、おいでなすった」と巻き上げた仕掛けに付いていたのは、夜の漁港の定番外道とも言えるゴンズイです。何かしら釣れればとアオイソメにしたとはいえ、これにはちょっとガッカリ。「もうちょいまともな魚来んかいっ!」とエサを付け替え投入。ついでに、もう1本の竿のエサもイワシからアオイソメにチェンジです。もうクエへの志なぞ、みじんも残っておりません。

ゴンズイ 日本全国☆釣り行脚
ゴンズイ 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

2本ともエサをアオイソメにしたことで、飽きずにアタリが出るようにはなりましたが、ことごとくミミンッときてゴンズイです。常夜灯が揺らめく雰囲気のある夜の漁港。もう少しまともな魚が欲しいところです。ましてゴンズイは、背ビレと胸ビレに毒の棘を備えていますから、ハリから外すのも面倒なもの。掛かったゴンズイを注意深くハリから外していると、視界の隅でもう1本の竿先ライトが、いきなり勢いよく絞り込まれました。

一瞬のドキドキ分相応な総菜魚

慌ててゴンズイを放り出し、竿を手にすると今までとは違う鋭い手応えが伝わります。やっと何かまともな魚が来たかと期待を胸に、時折鋭く引き込む手応えを楽しみつつ巻き上げ。足下まで来てヘッドライトに照らされた水中の魚影は、銀白で体高があり「クロダイか?」と抜き上げたのは…これまた、割と外道的ポジションのクロサギでした。塩焼きにしてそれなりに旨い魚ですし、まあ、ゴンズイよりはまだマシかと、クーラーボックスにしまいます。結局、その後も頻繁にアタるのはゴンズイのみ。エサが尽きかけたころ、再び鋭い手応えでクロサギが釣れたところで、寒さに心も折れ竿を畳むことにしました。

クロサギ
クロサギ 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

市場に流通することもほとんどないマイナー魚ながら、今回のように漁港などの投げ釣りではそう珍しくもないクロサギ。側扁が強い魚体ゆえの鋭いヒキで、一瞬期待してしまう割に釣り上げたときの期待外れ感のある、微妙な魚でもあります。

クロサギの塩焼き
クロサギの塩焼き 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

そんなクロサギも、塩焼きにして一杯やれば十分に旨い肴。脂っ気の薄い素朴な白身は、かえって地魚らしい味わいとも言えます。結果はクロサギだったけれど、アタリを待つワクワクと、一瞬のドキドキを味わえてお土産も確保できたのだから、これもまたヨシと一人納得の夜となりました。ま、分相応ということで…。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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