『はっぴいえんどの原像』著者:サエキけんぞう 篠原章~話題の1冊☆著者インタビュー
『はっぴいえんどの原像』リットーミュージック/2200円
サエキけんぞう アーティスト・作詞家。1980年ハルメンズ『近代体操』でデビュー。作詞家として、沢田研二、モーニング娘。、サディスティック・ミカ・バンド他、多数に提供。篠原章(しのはら・あきら) 1956年生まれ。大東文化大学教授などを経て評論家。
――『はっぴいえんど』との出会いを教えて下さい。
サエキ 小学校6年の1971年に、9歳上の姉が女子高生の家庭教師をしており、その女子高生からファースト・アルバム『はっぴいえんど』(=カバーに描かれた製麺所の看板にちなんで、通称『ゆでめん』と呼ばれた)を借りたのが最初でしたね。
篠原 私は70年の6月に岡林信康のセカンドアルバム『見るまえに跳べ』で、バックバンドとしてのはっぴいえんどの演奏を聴いたのが出会いです。実際に演奏を聴いたのは71年のフォークジャンボリーでしたが、ぶっ飛びました。終演後に細野さん、松本さんにもらったサインも残っています。
――細野晴臣、大滝詠一、松本隆、鈴木茂と錚々たるメンバーが揃っています。はっぴいえんどが音楽業界に与えた影響とは?
サエキ まず、洋楽であるロックのリズムに日本語を載せる実験で、現在のJ-POPに至るまでの和製ポップスに巨大な影響を与えました。松本隆は、その成果を踏まえて歌謡曲の作詞に切り込み、70年代以降の日本の歌謡曲を斬新な青年的感性で塗り替えました。
篠原 日本のロック、ポップスに対して極めてイノヴェイティヴ(=革新的)な変動をもたらしたと思います。その遺産は、あがた森魚、南佳孝、吉田美奈子、山下達郎、ムーンライダーズ、矢野顕子などにダイレクトに継承されていったと思います。また、歌謡界への影響は、YMO、大滝詠一を経て、1980年代初頭の松田聖子などの一連の作品に結実したと思います。
『ゆめでん』は日本のロックの金字塔
――ファースト・アルバム、通称『ゆでめん』は、もはや伝説といわれていますね。篠原 はっぴいえんどというと『風をあつめて』が収録されている1971年の『風街ろまん』が代表作とされていますが、ゆでめんにはロック・バンドとしてのはっぴいえんどの才能と経験と技量が凝縮されており、「日本最初のオリジナル・ロック」と呼ぶにふさわしいアルバムだと思います。もはや「日本のロックの金字塔」と言うべきでしょうね。
サエキ 実は僕と篠原はいとこ同士で、親戚会では「はっぴいえんど聴く?」「いいね」などと斜に構えながら語っていました。今思えば、自分にとって大事なものを熱弁せず、何気ない案件としてカワすようにツブやく姿勢は、現在の「音楽オタク」「渋谷系カッコつけ男子」とそっくりでしたね(笑)。1曲の編曲に多数の元ネタを使用し、立体的な編曲を行うという手法は、実はゆでめんが編み出していたんです。本書で解き明かしていますので、ぜひ、ご一読ください。
(聞き手/程原ケン)
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