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蝶野正洋『黒の履歴書』〜終わりのない“飲食店”に対するテロ行為

蝶野正洋 (C)週刊実話Web

ある若者が回転寿司店で醤油のボトルや未使用の湯呑みをペロペロと舐め回し元に戻す様子を撮影した動画が出回り、大騒動になっている。このような飲食店に対するテロ行為は数年前も立て続けに起きて問題になったけど、世代が一周したのかまた増えているようで、さまざまなマナー違反動画がSNSなどにアップされ続けている。

客席にある無料サービスの薬味や調味料は、基本的にイタズラしないという性善説に基づいて設置されている。それを不衛生に扱うことは、店側の努力や、他のお客さんのマナーすら台無しにする行為だよね。

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俺が子供の頃は、飲食店でも衛生に対する意識がもっと低かったと思う。清掃が行き届いてなかったり、店内に虫が飛んでたりね。屋台のラーメンなんて、何を煮込んでスープとってるのか分からなかったけど、そういう所に限って美味しかったりするんだよ(笑)。

飲食店だけじゃない。昭和の頃は町全体が不衛生だった。空き缶やゴミがそこら中に落ちていたし、子供は立ちションして、大人はタバコをポイ捨て。いま思えばスラム街みたいだった。

環境汚染による公害で、川や池もヘドロで淀んでいた。今日は光化学スモッグ注意報が出てるから外で遊ぶなとか、よく言われたよ。

そういう環境だったからこそ、飲食店のテーブルが少し汚れてるくらい、誰も目くじら立てなかったというのもある。

その頃と比べると日本は本当に清潔になった。これは本当にいろんな立場の人たちの意識が高くなったおかげだと思う。だけど若者のイタズラ心っていうのは、いつの時代も変わらないんだろうね。それがいま飲食店で発散されていて、だからこその厳罰化なんだけど、これも難しい問題なんだよ。

迷惑行為が故意ではない場合もある

アメリカは訴訟社会で、こうしたトラブルはすぐ裁判になる。でも、施設側のほうが負けることもあるんだ。例えば、空港で掃除の人がモップがけしていて、そこを通りかかった人が滑って転んでケガをした。だけど、ちゃんと注意書きを掲げていなかったということで、掃除してる側が莫大な賠償金を支払ったとかね。それからはしっかり表記するようになったというけど、日本もそうなっていく可能性がある。回転寿司の醤油に『口をつけて飲まないでください』と書かざるを得なくなるということだよ。

この間、俺はセルフ式のうどん屋に行ったんだけど、そこの出汁が美味いんだよ。その店は、かけうどんを頼んだ人が自分で出汁を入れるシステムになっている。俺は卵とじうどんを頼んでるから、ほんとはダメなのかもしれないけど、美味いから出汁をちょっと足したことがある。あれも迷惑行為といえば、そうかもしれない。でも、ダメならそう書いてくれないと困る。

何が言いたいのかというと、お店のシステムとかルールについていけなくて、そんなつもりがなくても迷惑行為をしてしまうこともあると思うんだよ。特にお年寄りとかは、回転寿司のレーンのシステムが分からなくて、人の頼んだ寿司を勝手に食べちゃったりとかね。配膳ロボットとかも、最初は戸惑うと思う。

迷惑行為は言語道断。だけど、間違えてしまうことは誰にでもある。そんなとき、お互いに大目に見るような部分は残しておいてほしいとは思うよね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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