岸田文雄 (C)週刊実話Web
岸田文雄 (C)週刊実話Web

「少子化対策」「LGBT問題」着地点が見えず自民党内で「もはや学級崩壊」と揶揄も

岸田文雄首相は2月4日、性的少数者(LGBT)のカップルに対して差別発言をした首相秘書官を更迭した。事実上お蔵入りしていたLGBT理解増進法案の国会提出をめぐり、自民党内は大混乱。少子化対策では児童手当の所得制限に関して閣内不一致が表面化するなど、政府・自民党は四分五裂の様相を呈している。首相の求心力は低下するばかりだ。


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「秘書官ごときが余計なことをしてくれたよ。パンドラの箱を開けてしまった」


自民党幹部はそう恨み節を漏らした。LGBT理解増進法案(以下、理解増進法案)は2021年5月、議員立法として超党派でまとまったにもかかわらず、自民党内で保守系議員が反対し、国会提出に至らなかった経緯がある。


その後、党内抗争にひとまず終止符が打たれた状態となっていたが、荒井勝喜前首相秘書官が非公式の場とはいえ、記者団に性的少数者や同性婚について「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」と発言。謝罪から更迭に至ったことで、この法案が再び脚光を浴びる事態となった。


2021年10月、衆院選党首討論会において、質疑者から理解増進法案について、「国会提出に賛成の人は挙手を」と促され、ただ一人、岸田文雄首相は手を挙げなかった。もともとこの問題に関心がないとみられ、今になってようやく「国会提出してほしいと話している」(首相周辺)という。


ここでおさらいも兼ねて簡単に説明しておくと、LGBTとはL=レズビアン(女性同性愛者)、G=ゲイ(男性同性愛者)、B=バイセクシュアル(両性愛者)、T=トランスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別にとらわれない性別を生きる人)など、性的少数者の総称。

社会の混乱を招く可能性も

伝統的な家族観を持つ保守系議員にとって、同性婚は受け入れ難く、同性婚につながる可能性がある理解増進法案は、できればつぶしておきたいのが本音。とはいえ、多様性を認めるのが時代の潮流とあって、あまり反対と言いすぎるのも分が悪い。

4月の統一地方選挙を前に、理解増進法案を成立させるべきだと考える自民党議員は少なくない。自民党の世耕弘成参院幹事長は、記者会見で「今国会に提出できるのであれば、提出すればいい」と前向きな発言をしてみせた。


しかし、これで流れができると思いきや、さにあらず。ガチガチの保守系議員には、選挙があろうとなかろうと、そんなことは関係なかった。法案にある「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」との文言を問題視し、再び反対の狼煙を上げた。


自民党の西田昌司政調会長代理は、記者団に「差別の禁止や法的な措置を強化すると、一見よさそうに見えても人権侵害など逆の問題が出てくる。社会が分断されないような形で党内議論をしていきたい」と語った。また、高市早苗経済安全保障担当相は衆院予算委員会で、「文言について十分に調整が必要だ」と慎重な姿勢を示した。


もっとも西田氏の主張は一理ある。差別の定義をはっきりさせず、かつ曖昧なまま「性自認」が導入されれば、社会は混乱することが予想される。例えば、女性だと自認する男性が、女子トイレや女湯に入ればどうなるか。事程左様にLGBT問題は単純ではない。


一方、少子化対策をめぐっては、一部の高所得者が支給対象外となる児童手当について、所得制限を撤廃するかどうかで、政府・自民党内は賛否が割れている。


東京都の小池百合子知事が、少子化対策として0〜18歳の子供がいる家庭に対し、1人当たり月5000円程度の給付を「所得制限なし」で行う意向を示したことは記憶に新しい。

 “N分N乗方式”に関心が…

国に先駆けて、所得制限をかけない政策を打ち出した小池氏。世間の評判がよかったからか、自民党の茂木敏充幹事長は後を追うように、衆院本会議の代表質問で児童手当に言及し、所得制限の撤廃を提案した。

立憲民主党(立民)の源流である旧民主党は、所得制限なしの「子ども手当」が看板政策だった。民主党政権で実行に移されたが、自民党から「バラマキ」と批判され、撤回に追い込まれた過去がある。それだけに、立民は自民党の方針転換を内心では歓迎しながらも、「どの口が言っているんだ」(立民幹部)と批判に余念がない。


与野党そろって所得制限撤廃を訴える展開となり、あとは岸田首相の決断を待つばかりとなった矢先の2月1日、西村康稔経済産業相が異論を唱えた。


衆院予算委員会で「限られた財源の中で、高所得者に配るよりも、厳しい状況にある人を上乗せや別の形で支援すべきだ」と語り、真っ向から所得制限撤廃に反対。あっさり閣内不一致となり、先行きが見通せない状況に陥っている。


国会では、子供が多い世帯ほど所得税の負担が軽くなる「N分N乗方式」なるものも取り上げられ、関心を集めている。この政策を持ち出したのは、またしても茂木氏だった。ただ、課税方式を抜本的に変えてしまうと、あらゆる制度に影響が出てくる。同方式は高所得者ほど恩恵が大きいため、政府は導入に慎重だ。


聞き慣れない政策が飛び交い、議論が散漫な状態となっている少子化対策。LGBT問題とともに着地点が見いだせず、自民党内からは「もはや学級崩壊だ」との声が漏れている。