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蝶野正洋『黒の履歴書』〜令和の遅刻は絶対NG

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

先日、プロレスデビューも果たしたタレントのフワちゃんが、韓国ロケの飛行機に乗り遅れて現地のタレントを3時間も待たせるなど、各地で「遅刻騒動」を招いているそうだ。

そこで論争が起こっていて、インフルエンサーのひろゆき氏は「遅刻してもちゃんと仕事ができれば問題ない」という主張。タレントの有吉弘行氏は、以前からフワちゃんに対して「遅刻だけは絶対するな」と言い含めるほど時間に厳しく、本人も1時間前には現場に入るようにしているらしい。

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俺も、昔から時間にルーズなほうだけど(笑)、ハッキリ言っていまの時代に遅刻は通用しない。

昔というか昭和の頃は、ひろゆき氏が言うように多少の遅刻をしても、それを仕事で取り返せば十分という考え方はあった。それが平成になって、だんだん認められなくなって、令和のいまは、遅刻は絶対NG。それくらい時代が変わった。

単純に行動する環境が良くなったこともある。昔は交通機関も時間通り動かないことが多かったし、さまざまなハプニングでどうしても遅れてしまうこともあった。でも、いまは正確だよね。それに、みんなスマホを持ってるから、いつでもどこでも電話・メールができる。連絡ミスやスケジュールミスも格段に減った。

自分勝手に思われがちなプロレスラーだけど、意外とみんな遅刻はしない。藤波さん、長州さんもちゃんとしてるし、猪木さんは成田の国際線を待たせたエピソードもあったけど、あれは遅刻と言うよりもスケジュールを詰め込みすぎて間に合わなくなってただけ。武藤さんも入念にウオーミングアップするから会場入りが早い。巡業中のバス移動でいつも遅れる常習犯が、俺と橋本真也だった。ルーズそうに見えるレスラーも、実は集合時間はちゃんと守るのがほとんどだったね。

脱落しても誰も手を差し伸べない時代

俺が巡業に出ていたころ、ホテルで寝坊してバスの集合時間に遅れてしまうことが多かった。ロビーから部屋に「出発10分前です」という電話がかかってきて、それでようやく起きる。

そういうときはカバンだけ廊下に出しといて、若手にロビーまで持って行ってもらうんだよ。すると、集合場所にカバンがあるから「蝶野はその辺にいるんだろ」と思われて、それで時間を稼ぐというテクニックをよく使ってたよ(笑)。

でも、いまは通用しないんじゃないかな。路線バスだって、走ってる客がいれば昔はちょっと待っててくれたような気がしたけど、いまは時間通りにすぐ発車してしまう。運転手がキッチリしているというよりも、乗ってる他のお客さんたちが、「なんでこいつ1人のせいで俺らが待たなきゃいけねえんだ」と怒り出すからかもしれないね。

昔は逆だったよ。学校なんかでも連帯感を重視して、みんな集まるまで、最後の1人まで待つ。それで全員遅刻しても、連帯責任だから仕方ない。

いまは誰か1人が脱落しても手を差し伸べない。特に若い世代は、しょうがないよねって、そのまま立ち止まりもしないで、どんどん先に行ってしまう。そういう考え方の違いが、いまの遅刻に対する不寛容さに繋がってるんじゃないかな。

とはいえ、いつの時代も遅刻するヤツが一番悪いというのは変わらないから、俺も気をつけようと思うよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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