(画像)R R/Shutterstock
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自民vs公明「10増10減」適用で衆院新選挙区めぐる“仁義なき戦い”

連立政権を組んでから四半世紀近く。途中、政権交代はあったものの、長らく日本の舵取りを担ってきた自民党と公明党の間に、隙間風が吹き始めている。1票の格差是正をめぐり、東京都など5都県で10議席増、山口県など10県で10議席減の、いわゆる『10増10減』が次の総選挙から適用されるためだ。


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「自公間では、相互に配慮した候補者調整が進められるはずだった。ところが1月25日、公明党が自民党を無視して、新たに誕生する都内足立区、荒川区などの東京新29区に岡本三成元財務副大臣、そして広島新3区に斉藤鉄夫国交相の擁立を公表し、自民党内から猛反発が巻き起こっているのです」(自民党関係者)


某自民党代議士は怒りのほどをこう表現する。


「聞いてない。冗談じゃない。こっちも候補者を立て公明党候補をぶっ潰す。自民党内では『連立解消!』という極論まで出始めている。公明党は一度、候補者を引っこめるべきだ」


実際、公明党の新候補者発表があるや否や、自民党都連幹事長の高島直樹都議が自民党本部に乗り込み、茂木敏充幹事長に直談判。新29区に自民党候補者を擁立するよう求める上申書を手渡した。


「公明党が東京で岡本氏を新29区にネジ込んだのは、集票力に尽きる。新区に組み込まれる足立区は2021年都議選でも2議席を確保しているうえ、2人合わせて約5万7000票も獲得している。公明党の支持母体である創価学会が選挙で最も強い地盤の一つといわれている」(同)

自民党とガチンコ勝負

岡本氏といえば、2021年衆院選で太田昭宏前代表の後継者として北区全域、板橋区・豊島区・足立区の一部を含む旧12区から当選した御仁。自民党は友党である公明党を重んじ、旧12区の候補者擁立を見送ってきた経緯がある。

「地元の自民党関係者らに何の断りもなく、いきなり新29区を取りにきた。仁義もヘチマもあったもんじゃないよ」(同)


広島新3区への斉藤国交相擁立に対しても、地元自民党筋は激怒している。


「新3区は、大量買収で東京地検特捜部に逮捕された河井克行元法相の選挙区とほぼ同じ。つまり、固い自民党の地盤だ。21年の総選挙では、比例中国選出だった公明党の斉藤国交相に譲り、自民党は比例に回った。だが、次の選挙については自公で協議するという合意文書を交わしていたのに公明党は暴走した。広島といえば、岸田文雄首相が会長を務める岸田派の牙城。自民党は岸田派の石橋林太郎衆院議員を新3区に擁立する準備を進めていた矢先じゃった。岸田首相のメンツ丸潰れじゃ」(自民党県議)


しかも、次の総選挙に向けての公明党の強気な姿勢はこれだけではない。


「公明党は東京新29区と広島新3区の他、定数が増える4都県の選挙区での候補者擁立を目指している。次期公明党代表が有力視される比例北関東の石井啓一幹事長は埼玉県三郷市、八潮市、草加市の埼玉新14区から出馬するともっぱらの噂だ。高木陽介政調会長も東京新29区に名乗りを上げた岡本氏の後継として、北区などの東京新12区で立候補しそうな情勢です」(テレビ局政治部記者)


まだある。選挙区が増える愛知新16区(犬山市など)や千葉新14区(習志野市など)でも、公明党は独自候補者擁立の動きを見せている。同選挙区は自民党とガチンコ勝負の気配だ。

創価学会“集票力”に危機感

なぜ、公明党は次の総選挙で選挙区での候補者擁立に執念を燃やすのか。

「理由は二つある」


と分析するのは選挙関連PR企業幹部だ。


「一つは公明党の集票マシーンである創価学会が高齢化のため、以前ほど機能しなくなり議席減の危機にさらされているから」(同)


公明党の比例代表得票は2005年衆院選の約900万票をピークに減少傾向にある。昨夏の参院選は約620万票と激減した。


「選挙区で確実に当選させ、なんとしても現有衆院32議席を死守したい」(同)


もう一つは玉木雄一郎代表率いる国民民主党の動向だ。同党は昨年、何度も政府予算案に賛成し自民党に急接近している。


玉木氏は、かつて岸田派=宏池会を率いた大平正芳元首相の遠縁。さらに岸田首相の懐刀である木原誠二官房副長官とは東大法学部、大蔵省入省の同期生で親しい間柄にある。昨年12月2日、時事通信は『国民民主の連立入りを自民が検討、玉木雄一郎代表の年明け入閣か』とぶち上げ、テンヤワンヤの騒動になった。


「岸田首相も玉木代表も火消しに走ったが、火のないところには煙は立たない。公明党は国民が連立入りなら存在感が薄れるため、反対の立場。岸田自民党を揺さぶるためにも、公明党は確実に議席を確保することに迫られている」(同)


公明党のなりふり構わぬ選挙区候補者擁立に、自民党中堅からはこんな発言が出ているのも事実。


「自公選挙協力で公明候補不在選挙区では平均2万票の学会票の支援がある。その支援で救われる自民議員は80人前後。だから公明候補の選挙区立候補には、ある程度は譲歩すべき」


自公の〝仁義なき戦い〟は波乱含みだ。