社会

生鮮食品めぐる「激安スーパー」大戦争〜企業経済深層レポート

企業経済深層レポート
企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

ここ最近、激安スーパーや生鮮食品を取り扱うディスカウントショップが異様な活況を呈している。

その背景を小売業界関係者がこう明かす。

「総務省が1月20日に発表した昨年12月の全国消費者物価指数は、前年同月比4%増で1981年12月以来、41年ぶりとなる上昇率を記録。コロナ不況と値上げラッシュに追い詰められた庶民は、1円でも安い食料品を求めて生活防衛するしかない状況です。そのため、人々が激安スーパーや生鮮食品を扱う安売り店に殺到しているのです」


【関連】出稼ぎに行く日本人が急増!“年収1000万”の寿司職人も〜企業経済深層レポート ほか

また、経済記者も言う。

「『帝国データバンク』によると、生鮮食品を扱うディスカウント店の昨年の市場規模は約4兆円。リーマン・ショックが起きた2008年度が1兆7000億円程度だったことを考えれば、異常な伸びです。一方、経済産業省によればスーパーの市場規模は2021年が前年比1.3%増の15兆41億円と、こちらも躍進。生鮮まで扱うディスカウント店が急激に業績を伸ばしたことで、最近はこの手のスーパーに業態変更するところも増えているほどです」

ちなみに、スーパーといえば以前は『イオン』や『イトーヨーカドー』などがポピュラーだったが、コロナ不況と食料品の値上げに伴い、群雄割拠にも似た状況が起きているという。

その中でも「エブリデー・ロープライス」(=いつでも低価格)のキャッチフレーズを掲げる『オーケーストア』は、爆安スーパーの代表格。首都圏に137店を展開するこのチェーンは、リスナーが安くて優良な店を選ぶTBSラジオの『スーパー総選挙』でも4年連続首位に輝いた強者なのだ。

無料進呈などの企業努力

「この店が命綱」と話す主婦も少なくない。前出の業界関係者がこう語る。

「肉類が安くて品質もいいと主婦の間で評判です。それと『オーケー』といえば激安弁当。過去にはカナダ産の厚切り豚肉を使用した『ロースカツ重』が年間440万食を販売する大ヒット。また、今年1月中旬までは温泉玉子入り『豚スタミナ丼』『ロースかつ欧風カレー』も388円(会員価格)で販売し、大人気でした」

同チェーンが品質の良い商品を安い価格で販売できる理由は、「本部が商品を一括で仕入れているから」(業界事情通)だが、あの手この手の企業努力で顧客をつかむ店は他にもある。

同じく首都圏で160店舗以上を運営するスーパー『ヤオコー』が、一昨年誕生させたディスカウント型スーパー『フーコット』もその一つだ。消費生活アドバイザーが指摘する。

「『フーコット』は現在、東京と埼玉に3店舗を展開中。体裁にこだわらず、安さで客のハートをわしづかみにすることを狙いとしているため、手数料のかかるカードは廃止。支払いは現金のみです。店内はBGMもなく、閉店時間も他より早い午後7時。コストカットを徹底させ、商品を1円でも安く提供する作戦です」

その意気込みはすさまじい。例えば1月21日の秩父店の特売品を見てみると、税込み3300円以上の購入客には先着2000人に限り、卵10個入りパックを無料進呈の大盤振る舞い。

また、通常300円〜500円で売られている『日清オイリオ キャノーラ油1000グラム』を限定1000人に199円(税抜き)で。『ヤマサの1リットルしょうゆ』も100円で提供していたほどだ。

一方、大阪で生鮮ディスカウント店として業績を伸ばしているのは、『大黒天物産』経営の『ラ・ムー』と「業スー」の愛称で親しまれ、全国制覇を目指す『神戸物産』経営の『業務スーパー』だ。

問屋関係者が言う。

「『ラ・ムー』は大阪で16店舗、生鮮品を格安販売し、着実に顧客を増やしている。今年1月半ばの販売商品を見ただけでも、海外産豚肉ロース切り落としが100グラム91円、エクアドル産えび1尾49円、満福握り寿司が10貫268円と激安です」

安売りには工夫が必要…

一方、冷凍食品に加え、精肉や野菜も格安販売する『業務スーパー』には主婦らが殺到中。例えば、同じく1月の特売品は鶏モモ肉角切りで2キロ1198円。100グラムに換算すると約60円という激安ぶりだ。

また『業務スーパー』同様、全国制覇を目指すのが福岡発のディスカウント店『トライアル』だ。経営コンサルタントがこう話す。

「『トライアル』は〝和製コストコ〟とも称され、ITやAIを駆使して小売りのムダ、ムラ、ムリを徹底して省き商品を爆安で売っている。各県に売り場面積平均6600平方メートル超えのメガセンター店、同4000平方メートルのスーパーセンター店があり、これを中心に全国274店舗を展開中です」

片や店舗数は少ないがテレビで「爆安店」と放送されたことがあるのは、埼玉県内に4店舗を運営する『スーパーマルサン』だ。

飲食店関係者が言う。

「同店の激安ぶりは評判で、1月21日時点での豚コマ価格は100グラム79円、ウナギが2尾1390円、鳥インフルエンザで高騰中の卵10個入りパックが99円。安売り店でも298円が相場の弁当が250円と格安です」

安さの秘密は仕入れ先に余剰在庫があれば底値で買い取り、中元や歳暮商品の余りなども大量に買い付けて、バラ売りしているという。安売りを見据えた知恵と工夫が、売り上げを支えているのである。

あわせて読みたい