『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』扶桑社/902円
佐々木チワワ(ささき・ちわわ)
2000年生まれ。慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)在学中。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。
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――佐々木さんが新宿・歌舞伎町のフィールドワークを始めたきっかけはなんだったのですか?
佐々木 歌舞伎町自体は15歳から出入りしていたのですが、18歳になってホストクラブに通うようになりました。そんな中、2018年の10月に歌舞伎町にあるビルの屋上で自殺をしようとしていた女性と遭遇し、「お金使わなかったら私って生きてる価値ないじゃないですか」と泣かれたことで、この街における価値と消費について考えたいと思ったのが、研究のきっかけです。
――ホスト狂いの女性に迫っていますが、なぜ、彼女たちはホストに走ってしまうのでしょうか?
佐々木 払った金額なのか精神的なものなのか、定義は難しいですが、お金さえ払えば居場所になって承認してくれるところ、自分の好きな人に関わることができるところ、大金を使えば主人公になれるところなど、さまざまな欲望をかなえることのできる空間だからだと思います。お金を使うって大変だけど、ある意味、誰でもできるので、気軽に承認を買えるんですよ。
孤独だからこそ人と関わりたい
――最近は歌舞伎町の一角に集まる〝トー横キッズ〟が社会問題になっていました。
佐々木 2021年から22年にかけて、治安が悪化したように感じますね。メディアが「居場所のない子供たちがたむろっている」と報道したことで、カルチャー的にトー横に親和性があるわけではないが、アイデンティティー的に逃げ場になると考える子供たちがやって来るようになりました。いまでは大人から子連れの親まで来ていて、ある種、家でも学校でもないサードプレイスとして、大人に関わることのできる場所にもなっています。一方で、悪い大人や犯罪行為も頻繁に起きる場所なので、ある程度の規制は必要かなと感じています。
――佐々木さんにとって、歌舞伎町とはどんな街なのでしょうか?
佐々木 行けば誰かがいるけど、なんとなくみんな孤独を感じている街だと思います。お酒を飲んでも、派手なコールを受けても、広場に集まっても、風俗に行っても、なんとなく孤独を感じるのは、お金で関係性を買っているからかもしれません。もっとも、みんなそうやって孤独を抱えながら、誰かに裏切られて傷ついてきたからこそ、なんとなく〝歌舞伎町〟という共同体意識が生まれたんじゃないでしょうか。袖振り合うも他生の縁と言いますが、その場に集まる人たちの優しさが光る街だと思います。私もすれ違った人に、とても助けられているなと感じています。
(聞き手/程原ケン)
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