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蝶野正洋『黒の履歴書』〜分類を引き下げても続くコロナ禍の生活

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

昨年亡くなったアントニオ猪木さんに対して位階「従四位」、そして勲章「旭日中綬章」が授与された。

今回、日本のプロレスラーとしては初の授与。これはもちろん、猪木さん個人の功績ではあるんだけど、力道山からはじまり、さまざまな選手が紡いできたプロレスという一つの文化が、国から認められたような気がして嬉しかったね。


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レスラーやファンからは「受勲だけでなく、国民栄誉賞を!」という声も上がっていたけど、俺も猪木さんならそれに値すると思う。ただ、現実的なことを言ってしまえば、猪木さんが国民栄誉賞をもらえないなら、プロレス界にもう次のチャンスはない。時代性もあるけど、日本人なら誰でも知っているプロレスラーという意味では、猪木さんを超える存在は今後現れないだろうからね。

ただ、国民栄誉賞というのは授与する基準が曖昧で、その時々の政権が支持率回復の人気取りのために用いるともいわれている。

いま岸田内閣は、防衛費増大や増税などで支持率が下がっているから、タイミングとしては有りなんだけど、逆に言えばそれどころじゃないくらい追い詰められているのかもしれない。

そこでさらに物議を醸しているのが、新型コロナウイルスの感染症法上の分類を、5月に現在の「2類相当」から、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」へ引き下げる方針を固めたことだ。さらに、屋内でのマスク着用についても緩和していく方針だという。

いくら政府がマスクを取れといっても、なかなか取らないのが日本人なんだよね。マスク生活が続いたおかげで、さまざまなコミュニケーションが変わってしまったということもある。

元には戻らないマスク生活

先日、治療院に行ったとき、天山選手の奥さんが偶然居合わせて、マスク姿で「どうもお久しぶりです」と声をかけてくれた。数年ぶりだったけど、マスクから覗く目元の印象がそのままだったので、「全然変わらないですね」と答えたんだよ。あとから、そのやりとりを見ていた治療院の先生が「いやぁ蝶野さん、『変わらないね』というのは魔法の言葉ですね。奥さんも機嫌よさそうでしたよ」と褒めてくれた。

そのひと月後くらいに、また奥さんと偶然会ったんだけど、そのときはマスクを着けてなかった。そこで改めて顔を見たら、やっぱり変わってたんで、もう何も言えなくなったね(笑)。

マスク一つで、それくらい印象が変わるから、若い世代が「もうマスクなしで外に出るのが恥ずかしい」という気持ちも分かる。

コロナ禍でのプロレス観戦は、声援や飲食が禁止だったんだけど、これもようやく緩和されてきた。でも、「声出していいですよ」と解禁しても以前のような大声援にはなっていない。やっぱり3年も続けていると、それはもう習慣になっているから、すぐに戻せといっても無理なんだろうね。

日本人は律義だから、マスクを外しても、密な場所では喋らないとか、咳エチケットに気をつけるとか、しっかりマナーを守る人が多いだろうから、大きな混乱は起こらないんじゃないかな。

それでも、コロナ以前の生活は完全には戻らない。「変わらない」と言いつつも、すべては変わっていくものなんだよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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