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蝶野正洋『黒の履歴書』〜少子化対策の前に現世代に活力を

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

岸田内閣が「異次元の少子化対策」を打ち出した。大規模な予算を組んで、児童手当を中心とした経済的支援、保育サービスの拡充などを目指すという。東京都も独自に18歳以下の子供に月5000円を給付する取り組みを発表した。


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いまの子育て世代は、お金がなくて将来に不安があるので子供を産まない。それで、とにかくカネをバラ撒いて少子化を抜け出そうという対策だ。

でも、若者にカネがなくて将来が不安なんてことは、いつの時代も変わらない。俺も20代のころは仕事もどうなるか分からなかったし、経済的な不安もあったから、結婚して子供を産んで育てるなんて夢のまた夢という感覚だった。

だからこそ、当座のカネだけ支給したところで、安心して子育てしようとまでは思わないんじゃないかな。

もっと社会のシステムから子供を育てやすい環境に変えていく必要がある。例えば、各地のコミュニティーを強化して、個々の家庭だけでなく地域社会が共同で子育てに取り組むとかね。これは難しいことではなく、ひと昔前の日本は地域の人々が助け合いながら、ヨソもウチもなく子育てしていたから、それを現代的に捉え直せばいいんだよ。

それと、子育てよりも前の段階である「子作り」から奨励していく。ただお金を配るんじゃなくて、若者にラブホテル代を出してあげるとかね。不倫とか、子作り目的じゃないカップルがホテルを利用するときは逆に50%増しにする(笑)。

40歳からの“学び直し”

同時に、いまの現役世代にも活力を与えるような社会システムを考えたい。

少子化の原因の一つに、30〜40代くらいの働き盛りが忙しすぎて、子育てしている余裕がないということもあるからね。

いまは健康寿命も伸びていて定年が65歳の企業も増え、さらに70歳まで働くというのも現実味を帯びている。それに終身雇用が崩壊してるから、普通のサラリーマンでも定年まで一つの会社に勤めたりすることがなくなってきている。

だから40歳くらいで一区切りをつけて、その先の人生や仕事を考え直す機会を設ければいいんじゃないかな。例えば40歳になったら、もう1回学校に行くシステムにする。大学院のような、学問を追求したり研究する分野でもいいし、もっと具体的な技術を学ぶ職業訓練校でもいい。使っていない学校施設を利用して、40歳からの2年くらいを、みんなで学校に通って勉強する。そこで、いままでやってきた仕事をより深めたり、まったく違うジャンルにチャレンジするんだよ。

その間の学費や最低限の生活費ぐらいは、ベーシックインカム的に給付するようにして、2年経って卒業したら再就職。企業にも、この「42歳新卒」を積極的に採用するように奨励していく。最近流行っている「学び直し」を社会システム化するイメージだね。

これは少子化対策だけでなく、労働力の流動化にもつながるし、再チャレンジが可能な希望を持てる社会になる。40歳同士が学校で出会って、新たな恋が生まれるかもしれないよ。

明るい未来が待っていて、年を取るのが楽しみな社会になれば、誰もが子供を産んで育てようと思うはず。カネをばらまくだけでなく、希望も振りまくようにしてほしいね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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