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新業態「寿司居酒屋」戦争が勃発!?〜企業経済深層レポート

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企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

寿司と聞けば、回転寿司を思い浮かべる読者も多いだろうが、近年は「1皿100円」を廃止するチェーンが続出中。そこに「寿司居酒屋」という新ジャンルが急ピッチで台頭してきている。

外食産業関係者が、その実態を解説する。

「近年、業界は回転寿司と高級店の二極化が進んでいたが、物価の上昇で100円寿司が崩壊。高級でもなく、カジュアルでもない店が登場した。しかもこれらは安価で、寿司に加えて肉じゃがや煮込み、焼き鳥などさまざまな料理を提供する大衆酒場化した店なのです」

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要は寿司を軸に多彩なつまみを提供する飲食店が増えているのだが、気になるのはなぜ今、新業態がブームになりつつあるのかという点だろう。きっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大にあるようだ。

「2020年から世界的に大流行したコロナウイルスの影響で、飲食業界は休止や時短営業を強いられ、閉鎖に追い込まれる店が続出。腕のいい職人が離職するケースが相次いだ。ところが、その窮地を逆手に取って空きテナントを安く借り、職人や余剰食材を集めてうまく商売する業者が出てきた。人気を得たのが、新ジャンルとも言える寿司居酒屋だったのです」(前同)

ブームを盛り上げたのは、以前から同業態をけん引していた『ヨシックスホールディングス』が全国展開する『や台ずし』だ。経営コンサルタントがこう語る。

「『や台ずし』は、江戸時代の屋台の寿司屋のように気軽に立ち寄り、寿司やつまみを楽しめる店。メニューは60円台の玉子やツナサラダ軍艦に始まり、大トロが400円台、マグロ、イカ、サーモンなどが入った『すし梅9貫』が989円と格安だ。併せてもつ鍋、寄せ鍋、餃子、湯豆腐など居酒屋メニューも豊富です」

居酒屋定番メニューも楽しめる

一方、回転寿司大手の『スシロー』が手がけ昨今、店舗を増やしているのが『鮨 酒 肴 杉玉』。こちらはランチ時に各店限定10食ながら『舟盛り丼』が1000円前後で食べられる。一品料理ではエビ、イカ、ウナギがのったシュウマイを、特製ウニじょうゆで食べる『欲張りなシュウマイ3種盛り』(527円)や、アオサでくるんだポテトサラダを透明なカプセル入りで提供する『杉玉ポテトサラダ』(527円)、『キャビア寿司』(一貫395円)なども好評だ。

また、居酒屋メニューの定番であるアジフライやだし巻き卵もあり、飲み物もビールにワイン、オリジナル焼酎、日本酒は山口県の「獺祭」など10種類以上を常備しているという。

関西に目を移すと大阪市を中心に8店舗を展開している『すし酒場さしす』(JOUJOU運営)も大盛況。同店は「5%の富裕層より95%の庶民に幸せを」をキャッチフレーズにしているが、その看板に偽りなしだ。

「中トロが中から飛び出した『とろ鉄火巻』やイクラがのった『とろサーモン巻』、シャリにウナギカツを挟んだ『うなかつサンド』などがいずれも1000円前後と格安。一品料理もイクラやトビコをのせた『寿司屋のポテサラ』(440円)など20種以上。平均客単価が2500円前後で、コスパに長けた大阪人も安いとうなる人気店なんです」(常連客)

片や愛知・名古屋で、一貫60円台の握りを提供しているのは『奥志摩グループ』運営の『大衆すし酒場 魚喜』だ。

「独自ルートで仕入れた鮮魚で60種類もの寿司を提供。中でもバターをのせた『うなぎ蒲焼きバター寿司』(1089円)、『焼きさば棒寿司』(1320円)は評判です」(飲食業関係者)

見栄え重視の“カタカナスシ”

もっとも、こうした寿司居酒屋には早くも差別化の波が押し寄せているという。代名詞となっているのは、「カタカナスシ」と呼ばれる新潮流だ。

「この手の店は派手なネオンなどを店内外に配し、インスタ映えする創作寿司や料理を提供しているのが特徴です。店名の多くがローマ字やカタカナであることから、『カタカナスシ』と呼ばれ始めた。コロナ禍で増え、今では20〜30代の女性が好んで通う店としても話題です」(前同)

その中でも業界関係者らが元祖と呼ぶのは、東京・銀座にある『SHARI THE TOKYO SUSHI BAR』だ。

「同店はロール寿司や握り寿司を柱に、見た目にも美しい創作料理が楽しめる。銀座で寿司とくれば数万円は当たり前だが、飲み放題付きのディナーが6000円前後とリーズナブルなことから、若い女性客をとりこにしているのです」(同)

東京・新宿に一昨年オープンした『スパイスワークスホールディングス』経営の『魚学マニア スシンジュク』もカタカナスシ系だ。

「こちらもインスタ映えする料理やネーミングの面白さがウケて、連日大盛況。人気メニューの『エビカニ合戦』(989円)は、カニの甲羅に入ったエビとカニの身、卵黄、イクラをよくかき混ぜ、巻き寿司にぶっかけて食べる豪快さ。また『マウント寿司』(989円)は、プラスチック容器が巻き寿司の上にのった状態で提供され、容器を取ると中に入ったとろろとイクラが流れ出す仕掛けが施されています」(飲食業界関係者)

物価上昇が止まらない現代に勃発した〝寿司戦争〟は、今後さらに熾烈さを増しそうだ。

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