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『令和の“応演歌”』工藤あやの~演歌歌手のユニット『みちのく娘!』が転機に(中編)

工藤あやの
工藤あやの (C)週刊実話Web

――前編では高校卒業後、師匠の弦哲也さんには内緒で上京し、その後、弦さんの事務所で働くまでを聞きました。上京してから1年にも満たない19歳で『さくらんぼ 恋しんぼ』でデビューしました。デビュー時には特別な感情が湧きましたか?


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工藤 嬉しい気持ちと同時に、「どうしよう…。できるのかな」という不安な気持ちも覚えました。でも、例えるならブレーキのないトロッコに乗った感じでした(笑)。当然、降りることはできません。そのまま活動し続け、約4年後の2018年に東北出身の女性演歌歌手だけのユニット『みちのく娘!』(津吹みゆ、羽山みずき)を結成したのが転機になりましたね。この活動は楽しかったな。

――「歌謡ミュージカル」をコンセプトにしたユニットですね。

工藤 『みちのく娘!』は歌も歌えば、ダンスも踊るユニットです。実は、小学校高学年のときに、宝塚歌劇団出身の先生にダンスを習っていたんです。ただ、途中で金銭的に厳しくなり、やめざるを得なかった。

大好きな歌もダンスもできるユニットは最高だなと思ったんです。歌にしても演歌だけでなく、歌謡曲やポップスまで幅広く歌いました。初めは戸惑いもあったのですが、レッスンを積んでいくうちにどんどん上達するようになった。そこで、自分の可能性を信じられるようになったのは大きかったですね。

また、人間的にも丸くなったと思います。デビュー当初の私はハリネズミよりもツンツンしていたんですよ。でも、ユニットを組んで、メンバー同士で尊敬し合ったり、足並みを揃えることを考えられるようになった。高校生の頃は、周りを考えずに発言し、一匹狼だったから、イジメに遭ったのかもしれないという考えが頭をよぎりました。

竹久夢二さんの“美人画”イメージ

――1月18日には8枚目シングル『洗ひ髪』をリリースしました。前作『白糸恋情話』に続き〝文学的演歌〟とのことですが、どんな曲なんでしょうか?

工藤 前作の『白糸恋情話』は、小説家の泉鏡花さんの作品をモチーフに、1曲を通じて小説を読んでいるような曲です。ミュージックビデオも、その世界観を表現できるよう、着物や表情、仕草の一つひとつにまでこだわりました。

今回の『洗ひ髪』は、モチーフとなった作品こそないんですが、前作から引き続き文学的要素が入った作品になっています。着物だけでなく、髪型や髪飾りも作品に映えるようなイメージを探し求めました。

私は、着物にしても古ければ古いほうが似合うようです。ある方から「工藤は竹久夢二さんの美人画のイメージに合うな」と指摘され、「えっ! このじゃじゃ馬がですか?」と聞き返すと、「黙っていればな」と言われてしまったんです(笑)。美人画は、目指している一つのイメージでもあるので嬉しかったですね。

ただ、レコーディング前は重く太いイメージで歌っていたのですが、弦先生から「より冷たさや寒さが伝わるように」とアドバイスを受けました。なんとかレコーディングには間に合ったのですが、それがなかなか上手くいかずに苦労しました。そうした息遣いや発声は、キャンペーンで見ても楽しめるように演じて歌っていますので、是非一度聴いてほしいですね。

くどう・あやの
1994年5月7日生まれ。山形県山形市出身。2014年1月『さくらんぼ 恋しんぼ』でデビュー。今年1月18日、8枚目シングル『洗ひ髪』をリリース。「昭和の忘れ物」と称される声の持ち主。

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