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韓国vs北朝鮮“全面核戦争”へ!? 専門家が危惧する『新・冷戦』勃発か

(画像)Alex SG/Shutterstock

昨年12月26日、北朝鮮の軍事用無人機5機が軍事境界線(MDL)を越境し、約5年半ぶりに韓国の領空を侵犯した。首都ソウルや江華島の上空を5時間以上にわたり飛び回った無人機に対し、韓国軍は戦闘機や攻撃ヘリコプターなどを投入して100発余り射撃したが、1機も撃墜できず、取り逃がしてしまった。

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「北朝鮮は偵察能力の強化を図っており、今回の領空侵犯は無人機の実戦的な運用や韓国軍の防空体制の確認、軍事施設の撮影などが主な目的でしょう」(軍事ジャーナリスト)

韓国軍が防空体制の弱点をさらけ出したことで、国民に一抹の不安を抱かせる事件となったが、迎撃のために飛び立った韓国空軍の軽攻撃機『KA1』が、畑に墜落する事故まで発生していた。幸い2人のパイロットは無事脱出したが、危うく〝戦死者〟を出すところだった。

「かねてより韓国軍の監視・探知能力は問題が多く、北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正党副部長にも小馬鹿にされています」(北朝鮮ウオッチャー)

しかし、韓国軍も手をこまねいているわけではない。昨年3月にイスラエル製の要人暗殺用ドローン『ロテムL』を導入。早ければ1月中にも運用を開始して、正恩氏をはじめとする金政権指導部の「斬首作戦」を進める予定だ。

「韓国の尹錫悦大統領は昨年10月1日、国軍の日の演説で北朝鮮の核攻撃に対する反撃力の強化を打ち出し、『対北朝鮮の偵察監視と打撃能力を画期的に補強する』『(北朝鮮が核を使用すれば)韓米同盟と韓国軍の圧倒的な対応に直面する』と表明しています。それに先立つ9月には、北朝鮮が制定した核の先制使用に関する法令に触れ、『韓国の生存と繁栄を脅かしている』と非難し、断固たる対応をすると宣言しました」(同)

韓国世論 “核武装”容認の気配

尹政権における北朝鮮の核・ミサイル抑止の基本は「3軸体系」と呼ばれ、具体的には次の3つを指す。

○攻撃の兆候を探知した際に先制攻撃を加える「キルチェーン」
○韓国型ミサイル防衛
○攻撃を受けた場合、北朝鮮指導部に報復する「大量反撃報復」

つまり「キルチェーンを実行した場合には〝全面核戦争〟に発展する可能性もある」(米国の軍事専門家)わけで、最悪のシナリオを想定しなければならない。

ただ、3軸体系の限界も指摘されており、米国との協力強化が不可欠であることは間違いない。米韓両国は北朝鮮の核・ミサイル抑止のため、共同の努力を惜しまず、情報共有の強化、非常計画の拡大、そして究極的には核戦争の模擬訓練を検討している。

「日本のように核アレルギーがない韓国では、かねてより核武装を容認する世論が根強い。北朝鮮の脅威を強く認識しているためか、昨年5月にシンクタンク『峨山政策研究院』が発表した世論調査では、核武装に賛成する声が7割に達しています」(同)

韓米同盟を重視する尹政権はまだ慎重ではあるものの、与党議員らは「米国の〝核の傘〟に頼らない国防力が必要である」と主張しており、そういった考えが国民に広く浸透しているようだ。

北朝鮮の“最悪のインフラ”が物語るのは…

一方、北朝鮮はすでに核兵器使用のハードルを下げている。昨年9月に自国の核保有国としての地位が不可逆的なものになったと表明すると、「核兵器はもはや戦争抑止のためだけでなく、戦争に勝つために先制的かつ攻撃的に使用できる」と明文化した。

「昨年末に開かれた朝鮮労働党中央委員会の拡大総会では、2023年の核戦略を掲げました。その最優先事項に挙げたのは、核兵器の製造を『指数関数的に増やす』というもので、韓国との戦争に使用できる戦術核兵器の大量製造を想定した発言です。朝鮮半島をめぐる緊張は、トランプ米大統領(当時)が『炎と怒り』で北朝鮮に応じると発言した2017年以来、最高潮に達しているのが現状です」(外交関係者)

韓国と北朝鮮の軋轢は、無人機や核・ミサイル問題をめぐって深まり、相手の攻撃の兆候を察知すれば先制攻撃を行い、実際に攻撃があれば報復するという〝戦闘準備状態〟に入ったことは明らかだ。もちろん朝鮮半島での有事は、日本にとっても重大な意味を持つ。

「ただし、見落としてはならない弱点が北朝鮮にはある。それは各種兵器を稼働させるための原油不足と、劣悪なインフラです。弾道ミサイルの重量に道路や橋が耐えられない。北朝鮮の交通インフラは劣悪で、首都の平壌市内でさえ高速道路の一部区間を除けば穴ぼこだらけ、地方の道路は未舗装が当たり前です。列車を走らせる線路も老朽化が進み、脱線事故が頻繁に起きている。列車発射型ミサイルが使い物になるとは思えません」(軍事ライター)

北朝鮮の挑発に対し、韓国は本腰を入れて対抗措置を取ろうとしている。しかし、それが北朝鮮の新たな敵対行為を生むことは必定であり、半島有事が現実味を帯びてきた。日本も一層の警戒を怠ってはならない。

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