福永朱梨(C)週刊実話
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女優/福永朱梨インタビュー〜年上ばかりと付き合うヒロインに「私に近い」と実感

生誕50周年を迎えた日活ロマンポルノが、記念プロジェクトとして企画した『ロマンポルノ・ナウ』。その第1弾『手』(松居大悟監督)に主演したのが福永朱梨だ。おじさんの写真を撮ってはアルバムにコレクションするのが趣味というヒロインで、原作は若い女性に人気の作家・山崎ナオコーラ(『お父さん大好き』文春文庫)。共演陣には津田寛治、金田明夫らのベテランが名を連ね、同年代の〝恋人〟役にはNHK大河俳優の金子大地という配役。生まれて初めての濡れ場を演じた福永に、その秘話を聞いた。


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――本作のヒロイン・さわ子は、でっぷりしたお腹や薄毛を懸命に隠している中年男性の写真を撮ってはコレクションするのが趣味。ちょっと変わってますね?


福永 はい。平凡なOLで、父親の年齢に近い男性と食事をしたりお酒を飲みに行ったりと、年上の男性とばかり付き合ってきた女性なのに、自分の父親とはうまく話せずギクシャクした関係…という設定です。


――オーディションでは、どんなアピールをしたのでしょう?


福永 実は、原作を読んだときから「これは私に近いなぁ」と思っていました。小さい頃から両親の友達や同僚の中で子供は私と妹だけということが多く、年上の人といると居心地が良かったんです。高校生のときは出会った大人の友達から写真を教わり趣味になりました。父親がパッチ姿でくつろぐ写真を撮ったこともあります。「そんなとこ撮る?」と言われながら。そういう姿への愛しさみたいなものはリンクしていたので、そこを熱くアピールしました。

おじさんは好きなのに父親は…

――私生活でもおじさんが好きということ?

福永 性別に関係なく、年齢を重ねている人に対しての憧れというか、リスペクトがめちゃくちゃあったんです。70歳くらいの、会ったこともないおばあちゃんと文通をしていたこともあるんですよ。


――何がきっかけでそんなことに?


福永 父が珈琲屋さんを営んでいるのですが、もともとはそこのお客さんでした。私が東京で俳優をしていると聞いて、会ったこともないのにお手紙をくださったんです。いろいろとアドバイスをいただいたり、日常を綴っているうちに文通友達になりました。3年後くらいに初めてお会いできたときは感激しました。


――今どきの人にしては筆まめなんですね。


福永 文通は友人ともしていたことがありますし、家族や友人の誕生日にはメールやLINEではなく手紙を出します。書きながら考え、自分の言葉を作っていくのが好きなんです。


――そんなヒロイン・さわ子の、冴えない上司役が津田寛治さん。公園デートをしたり旅館に泊まったりというシーンもありましたが、どんな方でしたか?


福永 クランクインの最初が津田さんとのシーンだったのですが、大先輩なのに敬語で話しかけてくださってすごく優しいんです。とても居心地のいい雰囲気は、役柄のさわ子と大河内さん(津田)との間にもたぶんあるものだったんじゃないかなと思います。


――外ではおじさんとのデートに興じながら、自分の父親(金田明夫)との関係はぎくしゃく。本当はファザコンなのに素直に甘えられない…という役でした。


福永 金田さんは私とはほとんど話さない役だったのですが、休憩時間はずーっとお喋りをしていました(笑)。昔のロマンポルノも経験されているので、当時のエピソードを聞かせてくれたり。なのに、撮影開始の声がかかると黙っちゃうからおかしくて。 初めての濡れ場も不思議と抵抗なく

――カラミの撮影に関してはアドバイスのようなものはありましたか?


福永 男女がそういう関係を持っているときって、ずーっと奇麗な姿勢でいることが多いじゃないですか。下着をつけるにしても、上品に穿くとか。でも金田さんは、その役の中で違和感がなければ奇麗に見えなくてもいいんじゃないかっておっしゃられて。それを聞いた私は、カラオケルームで元カレとの関係が終わって下着を穿くシーンがあるのですが、ポーンという感じで穿いてみました。


――確かに若い子の自然な感じが出ていたと思います。


――地元の広島でモデルをされてたんですよね?


福永 はい。『広島美少女図鑑』という雑誌があって、そこに出ている吹越ともみさんに憧れて始めました。17歳でした。


――吹越さんはドラマ『半沢直樹Ⅱ エピソードゼロ』(TBS系)でドラマに初出演して注目された女優さんですね。


福永 広島でのモデル時代は、コマーシャルとかの広告の仕事が中心でした。


――映画でも賞を取られていますが、濡れ場シーンは今回が初めてですか?


福永 キスシーンはありましたが、こんなにがっつりやったのは初めてです。でも、不思議と抵抗はありませんでした。物語の中での自然な流れだったので…。


――出演が決まってご両親の反応はどうでした?


福永 オーディションを受けることは伝えていたのですが、いざ決まったときは、どう説明しようかすごく考えました。ロマンポルノを知ってる世代でもありますし。なので、「今回は新しいロマンポルノを作ろうということでやってるんだよ」と、作品への熱い想いをスタッフに成り代わってプレゼンしました(笑)。俳優をやること自体は応援してくれているので、「楽しみにしているよ」と言ってくれました。

家族の“手”につながる思い出

――さて、作品では年上好きのさわ子と同世代の同僚・森(金子大地)との距離が縮まり、恋人とは言い切れないような微妙な関係でありながら体の関係を持ちます。共演した感想は?

福永 お互いに人見知りというのもあって、最初に会ったときは二言三言の会話しかできませんでした。でも、台詞を言いながら移動も頻繁にあるカラミのシーンがあったんですね。彼のアパートの部屋でスーツを着た私とオフィス・ラブごっこをする場面。テーブルの上で金子くんに迫られながら「ほら、見られてるよ」みたいなことを言われたり。何回かカメリハもしたのですが、どこかしっくり行ってなかったときに、金子くんがお芝居をすごく引っ張ってくれたんです。私はもう、そこに乗っかるだけの状態。本当にありがたかったです。


――撮影をしたのはいつごろですか?


福永 一昨年の年末でした。


――NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が放送される直前ですね。源頼家役の金子大地さんが、まさかあんな壮絶な死を迎えるとは御本人も知らなかったのでは?


福永 そうかもしれませんね。金子くんは出る作品によって顔がすごく変わるので、その役にしか見えなくなる。とても素敵な俳優さんだと思います。またご一緒したいと思いました。


――友達以上恋人未満の危うい関係を築く中で、2人が触れ合うシーンにはハンドタッチが登場します。手をつなぐ、そっと手を添える、手で愛撫する…。タイトルでもある「手」が重要な意味を持ってきますが、福永さん自身、手への思い入れはありますか?


福永 最初に思い浮かぶのは父の手ですね。あんなに指も太くて大きいのに、とても繊細な作業が得意なんです。母の手はすごく細くて華奢なのに、固い瓶の蓋を簡単に開けられたり。手につながる思い出はたくさんあります。


――好きなタイプも手が大きい人?


福永 実は私、女性にしては手が大きいんです。10代の頃だったか、デートで初めて手をつないだときに「手、大っきいね」と言われたことがあって、それがコンプレックスになっていました。だから、手が大きい人はいいなと思います。金子くんはとても手が大きいんです。そういう意味でも安心感はありましたね。
◆ふくながあかり 1994年12月7日生まれ。広島県出身。主演映画『彼女はひとり』(中川奈月監督)で第13回田辺・弁慶映画祭で俳優賞受賞。『手』はU-NEXTで独占配信中。