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蝶野正洋『黒の履歴書』~今後日本に求められる自主性

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

岸田内閣が防衛費の増大と、その財源として増税する方針を打ち出した。これによって2023年度予算案の防衛費は過去最大となり、巡航ミサイル「トマホーク」をアメリカから取得したり、装備品の維持整備費、弾薬の確保などに使われるということだ。

俺個人の意見で言えば、日本は憲法で「戦争はしない」と決めているんだから、武器をたくさん買い込むのは無意味だと思う。だったら、そのカネで国民を守るためのシェルターを作ったほうがいい。

実際に戦争が始まってしまったら、各国の軍隊がお互いの基地に自動報復でミサイルを撃ち合うから、いくら武器を持っていても攻撃を受けてしまうことは免れない。だったら、民間人はシェルターに立てこもって、ある程度の時間を生き延びるというのが現実的だよ。

シェルターのいいところは、戦争だけじゃなく災害時にも使えるということだ。地震や噴火などが起きた際の避難場所にもなるし、そのまましばらく生活できる規模のものを作れば、被災者の仮設住宅にもなる。

これはもう国家予算を投じてもいいアイデアだと思うんだけど、こういった大掛かりなことに関して国はなかなか動かないという現実がある。国防も防災も上が決めるのを待つのではなくて、民間からでも声を上げていくべきだよね。

防災の現場でも、基本的には上から下りてくる指示に対応していくことが多い。大事なことは国が決めてくれるという意識があるから、指示待ちになっている。

自主性を尊重、選手を信じた結果

でも本来、防災というものは各地域が自治権を持っているものなんだよ。だからこそ、各自治体ごとに防災について考えて、やり方を決めて、自分たちで率先して行動していかなくてはいけない。

消防、警察、自衛隊などの「公助」は順番としては後回し。やっぱり「自助」「共助」が基本なんだよ。

指示待ちになってしまうのは、システムの問題もあるけど、日本特有の教育制度が元凶だと思う。公式を暗記させたり、知識を詰め込むことばかりに力を入れて、子どもたちの自主性を奪うようなやり方をしてきたからね。でも、最近はそれを打ち破ろうとする動きもある。

サッカー日本代表がいい例だよ。森保一監督は選手の自主性を尊重するタイプ。指示をしないで、それぞれの考えでやらせてみる。これは、昔の考え方だと無責任とか、放任主義と呼ばれてしまうやり方かもしれない。でも、森保監督は個々の考え方に耳を傾け、深く理解した上で戦術に取り入れていくことで、歴代最強といわれるチームを作り上げた。

日本代表チームには、アルゼンチンのメッシやフランスのエムバペのような突出したスーパースターがいるわけではない。世界的なランクで言えば、偏差値50くらいの選手ばかりかもしれない。けど、それぞれが目標達成のために行動し、組織力を結集することでドイツやスペインを撃破して世界を驚かせた。

上からの押し付けじゃなく、個人レベルで考えて自己プロデュースしていく。防衛も防災もスポーツも教育も一人一人が自発的に行動していくというのが、日本がこれから成長していくためのカギになると思うよ。

蝶野正
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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