
『モリコーネ 映画が恋した音楽家』
監督/ジュゼッペ・トルナトーレ
出演/エンニオ・モリコーネ、クリント・イーストウッド、クエンティン・タランティーノ、ベルナルド・ベルトルッチ、ウォン・カーウァイ、ハンス・ジマーほか
配給/ギャガ
2020年に91歳で逝去した映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネ。ご存知ですか? 私は正直、名前だけは聞いたことあるくらいです。しかし、作品リストを見て驚きました。往年のマカロニ・ウエスタンの名作『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』から『死刑台のメロディ』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『アンタッチャブル』『海の上のピアニスト』…。〝ええっ!? これも?〟ですよね。モリコーネは生涯に500作以上の映画とテレビの音楽を手掛けたそう。しかも、1作品ずつの曲調がまったく似ていないのがすごすぎます。普通は〝○○節〟みたいなフレーズやアレンジが見えてくるものだと思うのですが…。
それもそのはず、このモリコーネという人は、音楽院でアカデミックな作曲法を学び、その中でも実験的な音楽を創出する現代音楽家。だから、自己模倣のメロディーを決して許さなかったんでしょうね。本作は、そんな伝説のマエストロに密着。結果的に生前の姿を捉える最後の作品となったドキュメンタリー映画です。
よくある作り方だと、苦楽を共にした妻との愛のサイドストーリーが描かれ、感動を誘導したりしがちです。しかし本作では、自作解説と作曲家としての葛藤の半生が、本人の口から語られまくります。こんなドキュメンタリー、見たことありません。
天才とはこういうものか…
また、弟子であり友でもある『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督だから、〝ここまで?〟というほど、つぶさに語り尽くしたんでしょうね。
結果的に没後の公開になりましたが、貴重すぎる本人映像が大量にフィルムに焼き付けられました。ある意味、音楽オタク向け伝記映画。本人から作曲技巧やアイデアの出し方などが解説されるので、その筋のマニアにはたまらんでしょう。
自分が驚いたのは、あの高齢で自作のリズムやメロディーを覚えていて口ずさめること。自分なんて、以前描いた作品をほとんど覚えていません。さらに、ピアノすら使わず、頭の中に鳴る音楽をそのまま楽譜に落とし込んでいる姿。天才とはこういうものかと。
そういえば、つい最近、伊福部昭の評伝集を買って読んだばかりでした。『ゴジラ』や『日本誕生』など日本の映画音楽の礎を築いた大作曲家です。しかし、今さら伊福部昭のドキュメンタリー映画を作るのは不可能。まだ製作可能な大物作曲家といえば坂本龍一でしょうか。まあ、「教授」がモリコーネのように自作を解説しまくる姿は想像しにくいですけどね。
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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