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大相撲「緊急事態」の土俵裏…“コロナ初場所”の誰も予想しなかった終幕

相撲のぼり
相撲のぼり (C)週刊実話Web

コロナ禍あり、ズル休みあり、惨敗あり――。

1月10日から始まった大相撲初場所(東京・両国国技館)で未曾有のドタバタ劇が続いている。十両以上だけで大量16人が休場に追い込まれ、毎日の取組を編成するのがやっとという窮状に追い打ちをかけるように、上位陣が総崩れ状態に陥っているのだ。

今の大相撲界で何が起こっているのか。逼迫する土俵裏をのぞいてみた――。

「やっぱり無理してやるんじゃなかった」

場所前からコロナの直撃を受けていた角界で今、そんな恨み節が上がっている。初日直前、協会員を対象に行ったPCR検査で新たに九重部屋、友綱部屋の集団感染が見つかった。この2部屋のほか、昨年末に感染が明らかになった荒汐部屋、さらに白鵬が感染した宮城野部屋を加え、初場所は総勢65人を休場させることで何とか初日の幕を開けることに。しかし、全体の約1割もの力士がいなくなったのだから、番付は穴だらけ。

十両がたった9番、幕内も18番と取組も激減。編成を担当する伊勢ケ浜審判部長(元横綱・旭富士)は、「人数がいないんだから、毎日、見ているファンが盛り上がるように作るのは非常に難しい」と、深く頭を悩ませるハメに陥った。

4場所連続休場の横綱・鶴竜に冷ややかな声…

また、八角理事長(元横綱・北勝海)も、初日恒例の協会あいさつでおよそ3分間、頭を下げ続けた。

「このたびは場所前、相撲部屋において複数の感染者が判明し、多大な心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」

こんなあいさつは前代未聞。途中でまた感染爆発があれば打ち切りもあり得たという、無理を承知の見切り発車だったのだ。

こんな瀕死状態にある相撲協会の足を引っ張ったのが、両横綱の白鵬、鶴竜というのだからタチが悪い。2人とも、3場所続けて初日から休場した。

コロナに感染した白鵬の休場はやむを得ないとしても、腰椎すべり症による腰痛で休場した鶴竜はいただけない。鶴竜の休場は4場所連続。半年以上、毎月300万円もの給料をもらって治療に専念していながら、いまだ相撲が取れないとは、どういうことなのか。

「来場所は引退を賭ける」

鶴竜は今場所の休場に際し、師匠の陸奥親方(元大関・霧島)にそう誓ったという。しかし、協会関係者にすれば、「何を今さら」。そんな冷ややかな声が上がったのも無理はない。

連敗ジゴクの貴景勝はついに休場…

この「ズル休み常習横綱」のおかげで、世代交代、新横綱待望論が一段と熱を帯びたのは当然のこと。その視線の先にいたのが、貴景勝、朝乃山、正代の3人の日本人大関だ。

中でも先場所、二度目の賜杯を抱き、この場所に綱取りを懸けた貴景勝への期待は大きかったのだが…。

「またしても横綱との対戦が消滅し、たとえ連続優勝しても『高いレベルの内容が必要になる』と、伊勢ケ浜審判部長はハードルを高くしていました。とはいえビッグチャンス到来に違いはなく、昨年末の合同稽古では白鵬らの胸を借りるなど、いつも以上に入念に調整したハズでしたが、まさに絵に描いたような空回り。初日、御嶽海に我慢しきれずに引いたところを押し出され、出鼻をくじかれた貴景勝は全く波に乗れず、目も当てられない連敗地獄に転落。9日目まで2勝7敗で、10日目にはついに休場し、不戦敗で負け越しが決定してしまいました。大関で優勝した翌場所に負け越したのは、2003年の名古屋場所での魁皇(7勝8敗)以来、18年ぶりのことです」(スポーツ紙記者)

この4年間で3回も平幕が優勝している初場所

この貴景勝の大失速に同調するように、ともに大関かど番の朝乃山、正代もピリッとせず。朝乃山はいきなり初日、前頭筆頭の大栄翔に全くいいところなく敗れるなど、10日目を終えて7勝3敗。

「やはり場所前、師匠が近大の先輩の若松親方(元幕内・朝乃若)でなく、モンゴル出身の現高砂(元関脇・朝赤龍)に代わった影響が出ていますね。土俵に上がっても集中しきれていませんから」(担当記者)

一方、正代も同時点で8勝2敗と優勝争いに加わっているものの、相撲内容はいまひとつだ。

このすっかり焦点がボケたレースを引っ張っているのが、平成3年秋場所の若花田以来、30年ぶりに三役以上を総なめした大栄翔。そう言えば初場所は、この4年間で3回も平幕が優勝している。去年も優勝をさらったのは幕尻の徳勝龍だった。

荒れる初場所――。また、誰も予想しなかった波乱の終幕を迎えそうだ。

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