『猿と人間』宝島社/1650円
増田俊也(ますだ・としなり)
1965年生まれ。小説家。北海道大学中退後、新聞記者になり、2006年に第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞した『シャトゥーン ヒグマの森』でデビュー。2012年、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で第43回大宅壮一ノンフィクション賞と第11回新潮ドキュメント賞をダブル受賞。
――増田さんは『シャトゥーン ヒグマの森』で、第5回『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞を受賞しています。以前から動物生態学にはお詳しかったのですか?
増田 僕はもともと動物生態学者になりたくて北海道大学水産学部に入学しました。柔道部とともに北大ヒグマ研究グループに入って、将来はホッキョクグマの研究者になりたかったんです。でも柔道部の練習があまりに厳しすぎてとてもクマ研には入れる状況になく、4年生で柔道部引退とともに大学を中退して新聞記者になりました。ですから若き日の夢を、小説で実現しているという感じです。
――日本の限界集落の問題にも触れていますね。
増田 日本という国はいま、大変な状況に陥っています。人口がどんどん減り、独自の文化はすべて消えていく運命です。出生数の減少がその大きな原因です。それらのしわ寄せが田舎にまず出てきて、人口が著しく減って少数の老人たちが住むばかり。いわゆる限界集落ですね。人が住まなくなった農村地帯は逆に野生動物たちの楽園となり、ニホンザルやイノシシ、シカなどが激増しています。しかしながら狩猟をしている人の団体「猟友会」のメンバーも高齢化が進み、駆除が追いつかない状況です。ニホンザルは全国で30万頭いるといわれていますが、これは自衛隊員の数や警察官の数と匹敵します。サルたちが叛乱を起こせば日本が転覆しかねません。
猿との激闘は“5”まで続く予定
――850頭ものニホンザルとわずか3人の人間の戦いが繰り広げられます。ストーリーの発想はどこから生まれたのでしょうか?
増田 戦争です。第二次世界大戦における連合国軍のノルマンディー上陸作戦は、『史上最大の作戦』や『プライベート・ライアン』などで映画になっているでしょう。ああいった大きな戦闘も一つひとつの場所にカメラを寄せて見ていくと絶望的な極地戦になっている。その絶望の場所にさまざまなドラマが生まれる。
――最後はボス猿と激闘が繰り広げられ、まさかの結末を迎えますね。
増田 はい。ラストまでのあの戦いが一番の読みどころだと思います。実はすでに続編『猿と人間2』の執筆準備をしています。構想では『5』までいく予定です。主人公の男子高校生と女子大生が『2』でまた猿との戦いに巻き込まれます。できるだけ早く書籍化する予定ですので、楽しみにしていてください。それからもう一つ、現在『シャトゥーン ヒグマの森』がハリウッドで映画化の話があるんです。こちらも期待して待っていてください。
(聞き手/程原ケン)
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