――前編では、41年の歌手生活の分岐点について伺いました。山川さんというと、ボクシングをしていることもあり、〝男〟のイメージが世間的にも強いと思います。ボクシングの経験を踏まえ〝強さ〟とはどのように捉えていますか?
山川 本当に強いとは、人間的にできていて、冷静な人ですよね。元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志君とジムが同じだったんです。世界タイトルマッチのときでさえ、相手のパンチや出方を見切っていましたからね。そういうことは、冷静でないとできないことです。
また、内山君はミット打ちなど自分の練習をしているときも、他の選手の練習の様子を見ていて、気になることがあれば「しっかりやらないと怪我するよ」とアドバイスします。冷静で人間的にできているからこそだと思います。
でも、俺自身は皆さんのイメージとは違い、人を笑わせるのが好きなんですよ。例えば、3月に伝承ホール(東京)で座長を務める舞台『護り屋』。昨年9月にも名古屋公演があったんですが、突然、違う台詞を入れたり、羊羹を食べるシーンではカラシを塗ったりと、お客さんには絶対に分からないように仕込んでいるんです。
そうすると、共演者も皆、緊張から解かれるじゃないですか。公演終了後には、再度この演者で芝居したいとなる。そういうことがすごく嬉しいんです。コロナ禍で、暗いニュースが多いご時世だからこそ、お客さんにも腹の底から笑って喜んでほしいんです。
“YouTube”は新しい発見だった
――コロナ禍に入り、もうすぐ丸3年です。最近では、だんだんとコンサートなどを開けるようになってきました。すぐにでもしたいことは何ですか?
山川 やはり、キャンペーンに行きたいですよね。それとコンサートも開きたい。そこでファンの方々と握手して、コミュニケーションを取りたいですよね。それは歌い手の俺たちもそうかもしれないけど、お客さんもこの状況は歯がゆいと思うんですよ。41年の歌手生活で多くのファンの方々に出会い、会場に来ていないファンの方がいると心配にもなります。
――今後、挑戦したいことはありますか?
山川 歌い手である以上、ヒット曲を出すのは最大の目標であり、夢でもあります。今の時代はどんな曲がヒットするか分からない。YouTubeに俺の曲がアップされているんですけど、『酒場しぐれ』や『北夜景』『東京桟橋』などのシングルやアルバムの表題ではない曲が、30万回以上再生されている。
俺たちが良いと思って作った曲と、ファンの方々の好みは違うのかなと勉強になりますね。それはYouTubeがなければ、分からない発見だった。そうしたヒントをベースに新曲を出したり、20〜30年前の曲を歌い直す方法もあるのかなと考えていますね。
元々、新しいモノは得意ではないんです。スマホも、事務所を独立したタイミングから使い始めましたから。それまではガラケーだったんですが、息子に「もうスマホの時代だから」と説得されたんです。
でもね。よくメッセージの打ち間違いをしますし、数行のメッセージを打つのにも時間が掛かるんです(笑)。ただ、時代は変わっても決して悪いことばかりではないですね。
やまかわ・ゆたか
1981年『函館本線』でデビュー。1986年『ときめきワルツ』で紅白歌合戦初出場の他、多数のヒット曲、音楽賞を受賞。2021年には『山川豊40周年記念コンプリートベスト』をリリース。23年3月『山川豊スペシャルライブin東京』を開催予定。ボクシングC級ライセンス所持。
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