「顔面凶器」と評される俳優の小沢仁志さんが主演を務めた、還暦記念映画『BAD CITY』が2023年1月20日より全国順次ロードショーされる。製作総指揮と脚本も担当した本作の裏話とともに、同世代へエールを送ってもらった。
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――小沢さんは、今年6月に還暦を迎えましたよね。20代前半で俳優デビューしてから現在も、精力的に活動している印象です。
小沢「若いころから今も変わらず精力絶倫だよ! むしろ、昔より元気かもしれない。撮影中、無意識にフルい立つこともあるぐらいだから(笑)。俺は、〝息子〟を『ジョニー』と呼んでいるんだけど、俺とは別人格だからねぇ。調整できないんだよ」
――ジョニーとは?
小沢「大好きな映画『ジョニー・ビー・グッド』(1988年公開のコメディー作品)から名づけた。この前も、『日本統一』を撮影してるときにフルい立っちゃって。(本宮)泰風に、『兄ィ、またジョニーが』って大笑いされてね。泰風は笑い上戸だから、ヤツの笑い止まり待ちで、スタッフに迷惑をかけちゃった。俺が死んだら、ジョニーがフルい立ったまま死後硬直してるかもしれない。可愛がってもらった松方弘樹さんに、『お前は年々、精力絶倫になるかもしれないな』と言われた予言が当たっちゃった感じかな」
自分自身を試せる作品を…
――あはは! そこまで精力があるからこそでしょうか、主演映画『BAD CITY』は、力強い作品でした。脚本と製作総指揮を務めることになった経緯を教えていただけますか。
小沢「60歳は一応、人生の節目だから、みんながアッと驚くような奇跡的なアクションができるのか、自分にまだその力が残ってるのか、試せる作品を作り上げたいと思ったんだよね。今後、自分の試金石になるとも想像できたし。で、プロットを書くと同時に、若手の監督を探した。アクションシーンが多すぎるから、俺が監督をするのは難しいと思って。そんな話をヤマ(山口祥行)にしたら、園村健介監督を紹介してもらえたってわけ」
――何作も脚本を書かれていますが、ラストを決めて書いていますか。
小沢「一度もラストを決めて書いたことはないね。いろんな登場人物のメモ書きをして、どういう設定でどの街を舞台にして…と書いていく。だから、自分でもどう転がるか分からない展開が待っているんだよね。今回、決めていたのはアクションシーンだけかな。銃撃戦ではなく、肉弾戦でのフルぼっこだけをテーマにした。自分が演じた虎田誠を自分に重ねたりもしないし、演じた役がおかしな展開になると帳尻が合わなくて、虎田は10回ぐらいは書き直したかもしれない」
――脚本の執筆は大変なんですね。見事な脚本のおかげで観客のこちら側は、冒頭から引き込まれました。
小沢「主人公の虎田は冒頭15分出てこないし、悪者が誰か丸分かりって展開、俺は大好きなんだよね。アクション映画の定番っぽくて、見てくれる人も分かりやすいし。なおかつ、主人公なのに抑えた芝居をして前に出ないよう意識したね」
何歳になっても人生を諦めるな!
――共演者も豪華ですね。リリー・フランキーさんや、かたせ梨乃さんとか。
小沢「キャスティング会議で俺が真っ先に挙げた名前が、リリーさん。ずっと、『この人はズルい芝居をするな』と思っていて、一度は共演したかったんだよね。俺とは違うタイプのヤクザ役を演じたかと思えば、映画『万引き家族』でのような役も難なく演じる。演じる幅が広いのがうらやましくて、一度会ったときに『いつか共演したい』と伝えて今回オファーしたら、快諾してもらえたんだよ。脚本には表情まで書かないんだけど、最後のリリーさんの顔つきは、俺もビックリしたね。さすがだ! と。梨乃姉とは、前に共演したことがあるんだよね。現場はめちゃくちゃハードだけど、すげえいい人だからニコニコと笑顔で耐えてくれるだろうと、お願いした」
――壇蜜さんも出演していますね。
小沢「俺、以前、壇蜜の事務所の社長と同じマンションに住んでいて仲がよかったんだよ。だから頼んだら、『必ず善処して実現します』と約束してくれて。2週間後にクランクインなのに、スケジュールは大丈夫か? と不安もあったけど、OKしてくれて感謝してる」
――そして本作は、大がかりなアクションシーンも見どころです。
小沢「最後は俺、120人ぐらいを相手に戦ったからね。数十年って言ったらオーバーだけど、数年、これを超えるアクション映画は出てこないと思うよ。なぜかというと、あんなに激しいアクションを役者の事務所がOKしてくれるわけがない。ほとんどスタントマンの吹き替えになっちゃう。戦う相手の手と足、俺の顔も映したいから、スタントマンやCGに替えても同じものは撮れないよ。今どきではあり得ない、喫煙シーンも遠慮なく入れているし。殴り合いに煙草三昧。できれば俺、この映画のキャッチコピーを『コンプライアンスってなに!?』って変えたいぐらいだから(笑)」
――映画以外のお話も。『週刊実話』の読者は小沢さんと同年代も多いと思います。諸兄にエールを送っていただけますか。
小沢「何歳になっても人生を諦めるな! かな。人間の三大欲求は、『食欲・性欲・睡眠欲』だけど、俺が一番強い性欲になぞらえて言わせてもらうと、たとえば、いい女を見つけたとする。でも、『自分はイケメンじゃないし、太っているから無理だろう…』なんて考えるのが、諦めている証拠。俺だったら織田信長の、『鳴かぬなら鳴かせてみせようほととぎす』精神で口説くもん。頑張って口説いても落ちなかったら次の人。人生を諦めちゃうと、自分が色あせてしまうんだよね。すると、生命エネルギーが落ちた人間に対する周りの目が変わり、困ったときに誰も助けてくれなくなる。人生はすべて、自分の責任でまっとうしないと」
胸がスカッとしてもらえると思う
――それは、定年後の人生も同様ですか?
小沢「もちろん! 人生100年時代なんていわれてるけど、定年後の晩年は残りわずか。10年から20年、長くて30年も生きられたら御の字じゃない? 会社に人生を捧げず、50代後半ぐらいからやりたいことを探しておけばいいんじゃないかな。例えば定年退職後でも働きたい人材を最優先に雇用する会社を起業するとか、釣りが趣味なら、釣具店を経営するとか。『宝の持ち腐れ』って言葉があるけど、腐る前に開花させればいいんだよ」
――最後に、この映画の見どころを教えてください。
小沢「この作品は昭和感満載かつ無国籍感もあるノスタルジックな作品にしたかったから、北九州市、中間市で撮影したんだよね。だから昭和で青春時代を過ごした50代、60代だったら、懐かしさを覚えながらも元気を出してもらえると思う。昭和を思い出して、俺たち役者のように、毎日殴り合う必要はないけどさ(笑)。現場でも話してたんだよね。『俺らは刑事役だけど、劇中では毎日生きるか死ぬかの戦いをしていて、次の事件ではすぐに殴り合い。これ実際に、給料いくらだったらやる?』って。みんな、『命を張るこの仕事はしたくない』って言ってた。それぐらいハードなアクションが楽しめるから、胸がスカッとしてもらえると思うよ。あと、中間市の市長と役所に協力してもらったんだけど、あくまで架空を前提にロケ地をお借りしただけ。中間市は『BAD CITY』じゃないと書いておいて」
――本作は若者にもウケそうです。
小沢「今は昭和レトロブームだからね。『故きを温ねて新しきを知る』ということわざがあるけど、全員とは言わないが、昭和の男の格好良さ…言葉が少ない美学も描かれているから、若者にも見てほしい。俺と同年代は当然だけど、20代ぐらいの若者にも刺さってくれるとうれしいなぁ」
(取材・文/内埜さくら カメラ/大駅寿一)
オザワ ヒトシ
1962年6月19日東京都生まれ。1983年5月、ドラマ『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)の犯人役で俳優デビュー。84年のドラマ『スクール☆ウォーズ』(TBS系)に出演しブレーク。その後、映画『ビー・バップ・ハイスクール』や、映画『太陽が弾ける日』など、数多くの作品で強面の個性を発揮する。2023年1月20日(金)公開の『BAD CITY』では主演・脚本・製作総指揮を務める。
『BAD CITY』
監督/園村健介
出演/小沢仁志、坂ノ上茜、壇蜜、加藤雅也、かたせ梨乃、リリー・フランキー他
配給/渋谷プロダクション
2023年1月20日(金)全国順次公開。
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