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蝶野正洋『黒の履歴書』~2022年印象に残ったニュースとは

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

予想もできないことがいろいろと起こった2022年。俺が印象に残ったニュースを挙げていこうと思う。

今年、世界的な大きな出来事といえば、2月に勃発した「ロシア−ウクライナ紛争」だね。当初は戦力差があるので早期に決着するといわれていたけど、事態は長引き、泥沼化している。

ウクライナが善戦しているのか、ロシアの見込みが甘かったのか。さまざまな分析が飛び交っている上に、アメリカやヨーロッパ諸国の思惑もあるようで、意図的に決着を引き延ばしているという説もある。

ただ、俺が気になったのは、この紛争も含めて最近のニュースはちょっと誇大広告が多いというか、実際に起きていることよりも、さらに不安を煽るような論調が増えていることだよ。

各メディアでは、紛争の影響で春にはエネルギーが足りなくなってインフレが起こるとか、9月には世界規模で食糧危機が訪れるなどと喧伝されていた。確かに日本でもさまざまな物が値上げされたけど、食べる物が足りなくなるまでの事態に至っていない。コロナ関連のニュースにも感じるけど、何かが起こるとメディアが大げさに焚きつけるから、どれが真実なのか分からなくなってしまう。

改めて「アントニオ猪木」の偉大さを知る

それで言うと、今年前半は「NFTアート」が来るということで盛り上がっていた。必ず儲かるから早く参入したほうがいいと煽っていたけど、10月には仮想通貨の市場が下落して、そのシステムを利用しているNFTもブームが沈静化してしまった。

俺も東スポと組んでやってみたんだけど、最初からちょっと疑問に思ってたんだよね。これはNFTがどうこうというよりも、東スポを読んでいるようなオールドタイプのプロレスファンは、まず仮想通貨をやってないだろうし、アートにも投資にも興味がない人がほとんど。冷静に考えたら、難しいビジネスだという結論になるよね。

そして、個人的に今年最も印象に残った出来事は、アントニオ猪木さんが亡くなったことだね。俺の子供たちは、普段はプロレスについてあまり話さないんだけど、「アントニオ猪木」という名前は知っていたし、昭和の偉大なスターが亡くなったという印象を受けていた。改めて猪木さんの知名度と功績、その存存の大きさを実感したよ。

世間に影響を与えた人ほど、亡くなると神話化される。歴史上の偉人、例えばナポレオンなども、実際に接した人たちからみれば大変な部分はあったと思うけど、亡くなると英雄として祀られ、語られ続ける。

それに倣って、プロレス業界としては「アントニオ猪木」のことは英雄として、神話化していきたい。その精神を引き継いだ選手たちに活躍してもらうことが何よりの恩返しになる。でも、猪木さんのスケールはそれだけじゃ収まらないから、追悼大会をやる団体がいくつも出てきたり、名前で商売しようとする人が湧いてくる。そんなビジネス的な野心も猪木さんの影響として引き継がれて、語られていくことになるんだろうね。

俺としては猪木さんから多大な影響を受け、勉強させてもらったから、本当に感謝しかない。これからもずっと俺なりに猪木さんのことを考えていくし、出来ることがあれば協力させてもらえればと思っているよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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