『ゴーマニズム宣言SPECIALウクライナ戦争論』扶桑社
『ゴーマニズム宣言SPECIALウクライナ戦争論』扶桑社

『ゴーマニズム宣言SPECIALウクライナ戦争論』著者:小林よしのり~話題の1冊☆著者インタビュー

小林よしのり(こばやし・よしのり) 1953年、福岡県生まれ。漫画家。大学在学中に『週刊少年ジャンプ』にて、ギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』、『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。1992年、『週刊SPA!』誌上で世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。
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――本書を読むと、ロシアの〝非道ぶり〟に驚かされますね。


小林 戦争は単なる「人殺し」ではなく、戦時国際法によるルールがある。それが現代国際社会の常識なのだが、ロシアはこれを完全に無視している。平然と民間人を標的に虐殺、破壊、略奪、レイプの限りを尽くし、しかもそれを意図的に「戦略」として使っているのだ。


そんな国は他にはないし、これはロシアが歴史的に繰り返してきたことでもある。「ロシアもウクライナも〝どっちもどっち〟」などと、したり顔で言う知識人がいるが、あまりにも知識がないと呆れるしかないね。


――日本も一歩間違えば、侵略されていたかもしれませんね。


小林 第二次世界大戦末期、ロシア(当時はソ連)はまだ有効だった「日ソ中立条約」を一方的に破って日本に侵攻し、北海道の半分を占領しようとしていた。それを阻止できたのは、千島列島最北端・占守島の日本軍が戦い抜いてくれたおかげなのだ。〝ロシアは条約を守らない〟その歴史を知っていれば、交渉して条約を結び、北方領土を返還してもらおうなんて考えは、完全な夢物語だと分かるはずです。

全世界の国々の命運を背負う

――ゼレンスキー政権が欧米各国の〝支援疲れ〟に危機感を強めています。どのように思いますか?

小林 ゼレンスキーは、ただ単にウクライナのためだけに戦っているのではない。もしもロシアのウクライナ侵略が成功するようなことがあれば、国際法秩序は崩壊し、世界は弱肉強食の帝国主義の時代に逆戻りし、軍事大国は小国を蹂躙し放題という野蛮な状態になってしまうだろう。ウクライナは、一国で全世界の国々の命運を背負い、国際秩序を守るために戦っているのです。欧米各国はその重要さを再認識すべきだし、もちろん日本も今まで以上の支援をするべきです。


――ここにきて一部地域では、ロシア軍の撤退も見られます。今後はどのような事態が展開すると思いますか?


小林 衰えることのないウクライナ軍の士気の高さとは対照的に、最初から全く士気のないロシア軍を見れば、最終的にはウクライナの勝利で終結するだろう。プーチンが失脚するのは間違いないが、その後のロシアが民主化するという保証は全くない。敗戦したのはプーチンが甘かったからだとして、より強硬で核兵器の使用も辞さない指導者が次に現れる可能性もある。いかにしてロシアを国際社会の脅威にならない国に変えていけるかが今後、世界的な課題になっていくだろう。


(聞き手/程原ケン)