12月8日に政府・与党は、防衛費倍増の財源として増税を行う方針を決めた。岸田文雄総理は、最終的に年間4兆円が必要となる財源に関して、歳出削減と決算剰余金、防衛力強化資金で1兆円ずつ捻出し、不足する1兆円を増税で賄う方針を明らかにした。
増税は、法人税増税が7000億円、たばこ税が2000億円、復興特別所得税の流用が2000億円とされている。ただ、法人税増税には財界の反対が根強く、復興特別所得税の流用には国民が大きく反発している。たばこ税の増税は、そもそも財源確保にならない。過去に行われてきたケースでは、増税を相殺する形で喫煙者数が減少し、税収がまったく増えていないからだ。そのため、増税項目の決着までには紆余曲折があるとみられる。
もし、増税が避けられないなら、一般国民の懐を痛めずに税収を増やす方法を考えるべきだ。方法はいくらでもある。例えば、国外転出時課税制度だ。
現在、海外移住する人が持つ有価証券などについては、出国時に課税されるが、そこには暗号資産が含まれていない。暗号資産で1000億円儲けて、それを日本で現金化した場合、半分は税金で取られる。ところが、ドバイ(アラブ首長国連邦の中心都市)に移住して売却すれば無税になってしまうのだ。しかも、いま課税されているのは含み益だけなので、それに加えて相続税相当を課税するようにしたらいい。それだけで1兆円を超える税収が見込まれるのは確実だ。
“国家公務員”給与から捻出…
また、歳出削減を上積みする方法もある。国家公務員の給与を民間の給与に合わせるのだ。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると2021年の平均年収は443万円だ。しかし、一方の「国家公務員給与等実態調査」によると、国家公務員の平均給与月額は41万3000円で、これに賞与を加えると、平均年収は681万円と推計される。民間より54%も高くなるわけだが、その理由は国家公務員の給与を事実上、大企業の正社員の給与に合わせて決めているからだ。
2023年度予算で、国が負担する公務部門の人件費は8.4兆円だから、公務員の給与を民間に合わせるだけで2兆9000億円の財源を捻出できる。荒唐無稽なことと思われるかもしれないが、東日本大震災の際には復興財源を捻出するため給与の7.8%削減が行われたこともある。
ただ、復興特別所得税は25年間が課税期間なのに、給与削減はたった2年で終わってしまったのだ。だから実現性は高くないとは思うが、財源を探すならもう一度、公務員給与の在り方を議論すべきだろう。
そのほかにも増収策はいくらでもあるのだが、そもそも防衛費倍増や敵基地攻撃能力の保有は、21年の衆議院選挙の際、与党の政策にまったく盛り込まれていなかった。原発の運転期間の延長や新増設も同じだ。取りあえず、来年度の増税は見送られたのだから、岸田総理は防衛費倍増と原発の新増設、そして増税を政策に掲げて解散・総選挙を行うべきだろう。
そうなれば、国民は厳しい審判を下すと思う。かつて旧民主党はマニフェストにまったく掲げていなかったにもかかわらず、消費税増税を自民、公明との3党合意で断行したことによって、政権の座から転がり落ちた。岸田総理は、いま強行突破してしまえば、選挙までに国民は忘れると考えている。だが、立憲民主党が、いまだに支持を回復できないことを考えれば、国民はそれほど忘れっぽいとは言えないのではないか。
岸田総理の暴走を止めるチャンスは、次の総選挙だけしかない。
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