島田洋七 (C)週刊実話Web
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長嶋さんから誘われたゴルフ~島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

フライデー襲撃事件後、たけしが謹慎していたとき、俺は埼玉・所沢に住んでいて、近くに西武園ゴルフ場があったんです。たけしも暇だから、たけし軍団と4〜5日に一度はゴルフ場に来て、一緒にゴルフをしていたんですよ。


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しばらく経ったある日、たけしの車で東京・世田谷界隈を走っていた。とある寿司屋の前を通ると、「ここが長嶋茂雄さん行きつけの寿司屋だよ。美味しいらしいよ」とたけしが指差した。そして、その店で食べることになったんです。


「渋い店やな」「やっぱり長嶋さんは食通なんだろうな」。そんな会話をしていると、「席は空いてる?」と外から聞き覚えのある声がした。店内に入って来たのは長嶋さんでした。


「あっ、タケちゃん」


「ご無沙汰してます」


俺は長嶋さんと初対面だったんですけど、長嶋さんから「あなたはBちゃんね」と声を掛けられた。B&Bで相方の洋八がいなかったから〝B〟なのは間違いないんですけどね(笑)。


長嶋さんはマネジャーさんと3人で食べてましたね。そうしたら「君たちはゴルフしないの? 今度、一緒に回ろうよ」と誘われたんです。場所と日にちを決めて一緒にコースを回ることになった。当日、千葉のゴルフ場へ俺とたけしは早めに到着した。長嶋さんとゴルフする機会があるなんて信じられないから嬉しくてね。長嶋さんを待たせるわけにはいかないし。

大忙しの長嶋さん…

グリーンで練習しながら待っていると、長嶋さんが通りかかった。

「おはようございます」


「あら、Bちゃんとタケちゃん。今日は誰と回るの?」


心の中では「長嶋さんですよ」と思ったけど、そうも言えないでしょ。「長嶋さんは誰と回るんですか?」と遠回しに聞き返したんです。すると「球団関係者」と答えるから「いやいや、僕らですよ」とここでツッコみました。


「ごめんね。悪かった」


プレーが始まると、俺はまだコースに出たのが5回目くらいだったから、1打目がとんでもない方向へ飛んでいった。「下手なんです」「正直に下手なら下手って良いね。何かスポーツはやってたの?」「高校まで野球をやってました」。


「野球をやってたなら、週に一度くらい回れば、1〜2年で上手になるよ。ゴルフは回数だからね」


9番ホールが終わり、昼飯時間になると、長嶋さんが「あっ」と突然、発した。何事かと思ったら「ごめんね。これから仕事があるの忘れてた。お金は全部払っていくから」。そう言い残し、仕事場へ行ってしまったんです。俺らとコースを回ることも忘れていて、途中で仕事を思い出すなんて、さすが長嶋さんは面白い人だなと感心しましたよ。


数年後、ニッポン放送のチャリティー番組に出演したんです。長嶋さんも参加していて挨拶すると「B&Bの人だよね。久しぶり」。今度はBちゃんではなく、「B&B」と呼ばれて俺も出世したと思いましたね。


別れ際、「今度、僕とゴルフ行こうね。一緒に行くと面白いよ」と誘われましたよ。以前、ご一緒したのが〝Bちゃん〟だったからかも(笑)。長嶋さんは毎日忙しく、いろんな人に会うから覚えてられないんでしょうね。
島田洋七 1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。