企業経済深層レポート (C)週刊実話Web 
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日本発「中古品」の海外輸出が絶好調〜企業経済深層レポート

ここにきて、日本のリユース(中古)品が国内外で人気を博している。リユース業界の関係者が解説する。


「リユース専門紙『リサイクル通信』によれば、2021年の国内の市場規模は前年比11.7%増の2.7兆円で2009年以降、12年連続で拡大を続けています。


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特にネット販売が伸びており、こちらは前年比14.7%増。またカテゴリー別では、衣料品が売上額約4600億円とトップながら時計やバッグなどのブランド品も好調で、前年比の2割増し。オモチャやプラモデルなどの模型類も2割増です。さらに、最近のキャンプブームやコロナ禍における健康志向も手伝って、スポーツやレジャー用品も前年比10.8%増と伸びています」


こうしたリユース業界の好調ぶりを示す顕著な例とも言えるのが、ビデオレンタル業者としても知られる『ゲオホールディングス』(名古屋市)の躍進ぶりだ。


同社はすでにリユース事業にも進出しており、2022年第3四半期(10~12月)の売上高は約810億円。前年同期の約560億円から144%もの伸び率を示し、19年同期と比べると倍以上の売り上げを獲得しているのだ。


「その同グループのリユース部門を支えているのが、若者らに『セカスト』の愛称で親しまれている古着やブランド品の販売を主とした『セカンドストリート』。この店は全国で750店舗以上を展開し、コロナ禍や円安不況下にあっても、年間60〜70店の出店ペースを崩していない。リユース市場拡大の多大な恩恵を受けているのです」

日本の商品は中古でも良品

一方、国内から海外に目を転じると、こちらも負けず劣らずの活況ぶりが見えてくる。中でも日本発の中古ブランド品は、今や海外でも注目の的だ。リユースバイヤーがこう明かす。

「日本にいながら海外にネット販売できる『eBay(イーベイ)』では、ロレックスをはじめとする高級時計やエルメスなどのバッグ類、またビンテージの楽器など100万円以上する品々の出品も珍しくない。その理由は、日本の中古品は丁寧に扱われたものが多い上に、それが円安と相まって『良い品が安く買える』と海外で話題になっているのです」


また、同じく海外需要が高まりつつある以下の商品には、高額利ザヤを狙うバイヤーも増えているという。


「それがカメラやバイク、そしてトラクターなどの精密さが世界に知られた日本製機器です。これらは以前から東南アジアなどで人気を博してきたが、円安でさらに人気が上向きに。ショベルカーやブルドーザー、クレーン車など、大型の中古建設機械も売れ行きに拍車がかかっているようです」(前出・業界関係者)


ちなみに、この業界関係者によれば、海外需要が日増しに高まるこれら中古精密機器には、驚くべき事実があるという。なんと「輸出する商品は、動くものばかりではない」というのだ。


「日本製品は品質抜群だが、海外で故障した際はなかなか部品が調達できない。そのため、以前からカメラやバイク、農作業機などのジャンク品が部品取り用に輸出されていたのです。今はロシアのウクライナ侵攻の影響で、さまざまな部品が品薄状態。おかげで世界的に中古品需要が右肩上がりなのです」(前同)

円安も相まって需要増

つまり、ジャンク品の需要も高まり続けているというわけだが、戦争とコロナウイルスの感染拡大による影響はこれにとどまらない。我が国の輸出品の代名詞である日本車――そのリユース品にも大きな影響を及ぼしているのだ。中古車業界関係者が言う。

「『日本中古車輸出業協同組合』がまとめた22年10月の中古車輸出台数は、前年同月比の3.6%増、10万7872台でした。国別では実はロシアが5カ月連続首位で、しかもその増加率は対前年比65.3%増の2万4625台と驚異的な伸びを示しているのです」


ロシアへの中古車輸出が高まっている理由はもちろんウクライナ侵攻の長期化にあるが、これには国内事情も色濃く影を落としているという。先のリユース業界関係者がこう語る。


「日本の中古車は品質が良い上に走行距離が少なく、車検制度のおかげで整備状態も良好。そのためロシアでは以前から人気が高かったが、今回のウクライナ侵攻で日本や欧米の自動車メーカーがロシアから撤退。同時に自動車部品メーカーも撤退したため、今春以降、国内で新車の生産ができなくなってしまったのです。また日本はウクライナ侵攻後、ロシアに経済制裁を行っているが、車は価格が600万円までOKとまさにザル政策で、輸出が増える要素が整っているのです」


ちなみに、近年は日本のアニメやゲーム関連グッズも大人気。輸出量が増え続けているという。


「2020年のアニメ番組の海外輸出額は対前年比12.9%増の約496億円と堅調で、最近は『eBay』でもアニメの中古フィギュアが高騰中。また、希少なファミコンソフトが1本20〜40万円と高額取引されることも多く、さらに21年には限定品の『ポケモンカード』が4000万円で落札されたほどでした」(前同)


SDGsの一環としてリユースは世界的に注目されているが、中古品が円安、物価高にあえぐ日本の救世主となりそうだ。