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100円ショップ“脱100円”攻防の舞台裏~企業経済深層レポート

企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

100円ショップ(100均)の店頭で、100円より高い商品が増えている。コスト上昇が主な理由だが、その一方で「100円を絶対死守する」という企業もあり、100円ショップ業界の中でも対応が割れ始めた。果たして、〝100円均一〟は持続されるのか、それとも多様化の波の中で、徐々に従来の姿を変えていくのか。

まずは100円ショップ市場の動向を見てみよう。ここ数年、市場は順調に右肩上がりを続けている。その理由を業界関係者が解説する。

「現在の市場規模は全体で約8100億円あり、そのトップランナーは、なんといっても大創産業(広島県東広島市)が運営する『ダイソー』だ。国内3439店舗を展開し、2020年の売上高は5015億円(19年4月~20年3月の12カ月)となっている」

業界2位の『セリア』(岐阜県大垣市)も、20年第2四半期(4~9月)は売上高974億円で前年同期比10.7%増、業界3位の『キャンドゥ』(東京都新宿区)が2.1%増(20年3~8月期)、4位の『ワッツ』(大阪府大阪市)が4.1%増(同)となっている。

コロナ禍における100円ショップ大手各社の健闘について、経済ライターはこう分析する。

「昨年4月の緊急事態宣言で一部店舗は休業を余儀なくされたが、マスクや除菌グッズなどの感染対策商品が売れたほか、巣ごもり需要で製菓や手芸用品などが好調でした」

これまで斬新な低価格商品を提供してきた100円ショップだけに、コロナ禍でも消費者ニーズを素早く見極め、順調に業績を伸ばしているのだ。

100円ショップに求められる“高級感”

しかし、かつてない苦境の中で奮闘努力してきた100円ショップだが、ここにきて〝脱100円〟に動く会社が増えてきたという。

それを解説する前に、なぜ100円ショップが成立してきたのかを考えてみたい。

最大のポイントは安い製造コストと商品の大量発注、そして宣伝費をはじめとする無駄の排除で、それらが三位一体となり、低価格商品を提供してきたためだ。にもかかわらず、一部商品で脱100円に向かわざるを得なくなった理由は何か。

「一つは近年における原料価格や人件費の高騰で、従来の製造コストが維持できなくなったからです。二つ目は消費者ニーズの変化で、100円ショップといえども、高度なデザインと見た目の高級感を求められるようになりました」(同)

つまり、200円や300円、中には500円の商品も出てきたのは、安さより質の高さを求められるようになったからだ。