――2001年に『霧情』でデビューし、今年で22年目を迎えます。2015年から今年の『NHK紅白歌合戦』まで8年連続で出場が決定し、順風満帆な歌手生活に見えますが、デビューからの22年を振り返っていかがですか?
山内 17歳で故郷の福岡県糸島市から上京しました。幼い頃から歌手を目指していたので、いずれは親元を離れなければいけないことは理解していたんです。でも、いざ上京すると、恩師で作曲家の水森英夫先生以外に知り合いがいない土地で寂しい思いもしましたね。
翌年、デビューし、テレビ番組にも出演させていただいたのですが、なかなか曲がヒットしなかったんです。3年目を過ぎた頃には、テレビや雑誌、新聞への露出が目に見えて減っていきました。キャンペーンに行くと、お客様から「まだ歌ってたの?」と言われたこともありました。年末になると、紅白歌合戦や日本レコード大賞に自分より遅くデビューした歌手が出場している。それを自宅で1人見ながら悔しい思いも抱きました。
でも、その時期を乗り越えられたのは「歌が好き」という気持ちに支えられたからです。僕も必ず紅白歌合戦に出場するんだ、頑張ろうという気持ちが消えなかったのは大きかったです。
「歌が子供なんだ」ということ
――決して、順風満帆ではなかったのですね。そうした経験を踏まえ、22年間の歌手生活で歌に対する心境の変化はありましたか?
山内 今年3月に『誰に愛されても』をリリースしました。同曲は、売野雅勇先生が作詞を手掛けた〝真心〟がテーマの曲です。真心とは何なのか、また真心を生み出すためにはどうすればいいのか。そんなことを考えながら1日1日歌ってきました。
そのときに思い出したことがあります。若い頃、先輩たちが「歌が子供なんだ」とおっしゃっていたんです。特に女性の先輩たちがそう言っていたので、母性本能があるからではないかと当時の自分は考え、理解できなかった。最近になってようやく歌は子供と同じように愛情を注ぐと、その分を返してくれることを実感できるようになってきました。
歌に愛情を注ぐとは、練習することや何度も歌詞を自分なりに噛み砕き、向き合うこと。そうしないと歌は遠くへ行ってしまうんです。寄り添って歩いていくためには、きちんと向き合い愛情を注ぐことが大事なんです。
曲はCDなど音源として残っています。ですが、ステージで歌う1曲はその場で消えていってしまうんです。目には見えないけれど、お客様の心の中にしっかりと残るように、真心を込めて歌うことが大事だと考えるようになりました。同曲を通じて、歌に愛情を注ぐとは真心を込めることではないかという思いに至ったんですね。
また、物事が速いスピードで流れる時代だからこそ、丁寧に歌うことも心がけています。22年間、歌い続けてきて、たくさんの子供と言うべき歌が生まれました。例えば、25曲を一つのステージで歌うとすれば、1曲1曲の歌詞、一言一句に丁寧に真心を注いで伝えていく。そういうことをお客様は感じて、涙を流してくれることもあるんです。歌い手ならではの幸せを味わえるようになったのは大きな変化ですし、歌と向き合えています。(以下、後編へ続く)
山内惠介(やまうち・けいすけ)
1983年5月31日生まれ。福岡県糸島市出身。2001年『霧情』でデビュー。2015年からNHK紅白歌合戦に連続出場中。今年3月『誰に愛されても』をリリース。
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