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蝶野正洋『黒の履歴書』〜サッカーW杯“家庭内対決”の結果

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web 

カタールで行われたサッカー・ワールドカップは期待以上に盛り上がったね。

日本としては、やっぱり初戦のドイツとの試合がターニングポイントだったと思うけど、個人的にはちょっと複雑でね。

俺は日本VSドイツ戦は家のテレビで生観戦してたんだけど、ワイフのマルティーナはドイツ出身。それに彼女の従兄弟も遊びに来てたので、2人はドイツの応援に回った。俺と息子たちは日本代表のサポーター。家庭内で相対する状態で運命のキックオフとなった。

試合展開は、前半にPKでドイツが1点先取。あまり表情に出さなかったけど、マルティーナたちは喜んでたと思う。でも後半、日本が立て続けに2点を決めて逆転。そのまま試合終了で、日本が劇的な勝利を飾った。

すると我が家のドイツ応援チームは「これは出来レースだ!」と文句を言い始めた。オリンピックだってカネと利権でズブズブだったんだから、W杯も出来レースに違いない、と。俺はそれに特に反論せず、心の中で日本の勝利を祝ったよ。

その直後からテレビでは、日本の歴史的な勝利を報じ始めた。次の日も朝から晩まで〝ドーハの歓喜〟と称して、代表メンバーや監督を称賛。まさに〝手のひら返し〟というやつだよね。

おかげで、俺も今回の代表選手について詳しくなった。森保監督のことも、それまでは表情が乏しくてなんのプランも考えてなさそうな人だなという印象だったんだけど、思慮深くて熱い名将なんだと見直したよ。

コスタリカ戦では一変して…

でも、次のコスタリカ戦ではいいところなく負けてしまった。日本サッカーの悪いところが出たよね。ドイツ戦のときは、ボールを回して横のパスを繋いでゴールを狙うというヨーロッパ型の組み立てをしていた。でも、コスタリカ戦では向こうも勝負賭けてきてるから、パスが回せなくて、潰し合いがすごかった。日本選手は体格的に劣っているから、体を使ったボールの取り合いだと競り負けてしまう。打つ手がなくなった日本は、ひたすら縦にボールを入れるんだけど、ゴール前での決定力が足りないという、従来の悪しきスタイルに戻ってしまった。

そしてスペイン戦の勝利で決勝リーグ進出を決めたけど、今回の一次リーグ突破は最初のドイツ戦に尽きると思う。コスタリカ戦の敗北で、さらに手のひら返しをして、監督や選手をバッシングするサポーターも多かったけど、そんなことするくらいならドイツ戦のゴールを何度も見直して、あのときの喜びを噛み締めたほうがいいと思ったよ。

今回のW杯は、スタジアムは綺麗だし、中継のカメラや演出も洗練されていて見応えがあった。なんでも、今回のW杯にカタールが費やした予算は最終的に42兆円を超えるという。2020東京オリンピックの30倍以上の規模だというから途方もない金額だよ。

現在、カタールの人口は約300万人弱、そのうちカタール国籍が1割で9割が外国人労働者だそうだ。ということは、それを雇っているのは1割の富裕層。格差という意味でも日本以上だよ。

こういったW杯の陰の部分はあまり報道されていない。これはやっぱり、あの広告代理店が絡んでいるからだろうね。だとすると、ウチのドイツサポーターたちの見立ても、間違ってないのかもしれないよ。

1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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