コロナ禍で菅政権の行く末が見通せない中、なぜ二階幹事長は国民批判の的になりそうな議員年金復活に力を入れるのか。
「自民党長期政権維持のためだ。数年前から、自民党系議員がイニシアチブを握る全国都道府県議会議長会や、全国1000を超える地方議会から、議員年金復活の要望が党本部に寄せられていた。このため自民党では長期政権維持、国政選挙に勝つためにも復活が必須として模索を始めた。つまり、議員年金を復活させれば、自民党に恩義を感じる地方議員が増えるうえ、今は候補者不足に嘆く過疎自治体も、保守系議員候補が続々出てくると計算したわけです」(二階氏側近)
もっとも、党勢拡大は表向きの話だ。老獪な二階幹事長は〝我田引水〟にも抜かりはない。
「地元選挙区の地盤固めと、もっぱらです」(政治ジャーナリスト)
実は、二階幹事長の選挙区である和歌山3区では、参院幹事長の世耕弘成元経産相が衆院鞍替えを模索しているといわれる。というのも、同3区の旧選挙区時代は世耕氏の祖父である弘一氏の地盤だったのだ。
「2月で二階幹事長は82歳と高齢だ。二階幹事長の議員引退はそう遠くない。引退と同時に衆院鞍替えを狙っている世耕氏に対し、二階幹事長は自分の秘書を務める三男・伸康氏に地盤を譲りたい。和歌山3区のお膝元、御坊市では2016年の市長選で二階幹事長側は長男を擁立し大敗した。二階王国はまだ盤石ではない。そこで地方議員年金復活。これを手土産にすれば、地元は伸康氏の一枚岩で固まるという腹だ」(政界消息筋)
常に一歩先を読む“寝業師”二階幹事長
権力闘争を繰り広げる二階幹事長のあくなき野望はまだある。院政だ。
「国会も地方も、本音では議員年金の復活を心待ちにしている。だが、矢面に立って批判を浴びる覚悟のある国会議員はいない。二階幹事長が議員年金復活の汚れ役を一手に引き受ければ、仮に幹事長職を辞しても、二階派47人のドンとして自民党を差配し、地方にも睨みを利かせられる」(同)
自民党長老が指摘する。
「常に、一歩先を読むのが『寝業師』二階氏だ。コロナ対策は、菅首相の一任で高みの見物を決め込むはず。感染抑制に成功し支持率アップなら菅続投、失敗したら〝ポスト菅〟でいち早く動くだろう。政局を見据え、自らは用意周到に『議員年金復活』の手柄だけは確保する策略でしょうな」
菅首相、二階から梯子を外されそうだ。
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