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蝶野正洋『黒の履歴書』~危険な失言と場の空気

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

法務大臣を務めていた葉梨康弘議員が更迭された。岸田派のパーティに出席して「法務大臣というのは、朝、死刑のハンコを押して、昼のニュースのトップになるのはそういうときだけという地味な役職なんです」と発言して問題になり、当初は撤回・謝罪で済ませようとしていたけど、最終的には大臣を辞任することとなった。

葉梨議員は、1959年生まれの63歳。この世代は、空気を読まない発言をしてしまう人が多い。それに出身が三鷹だって? そりゃダメだ(笑)。俺も三鷹だからよく分かるけど、これは生まれ育った時代と場所が悪い。葉梨議員は駒場高校から東大に入って、警察官僚から議員になったというエリートだけど、この年齢で三鷹生まれなら余計なことをしてしまう、というのも俺は理解できる。

葉梨議員の同い年のプロレスラーでいえば前田日明さんがいる。前田さんは知識が豊富で、鋭い意見を持っている頭のいい人だけど、たまに言ってることの加減が分からなくなるときがあるんだよね。

武藤さんも失言が多い。あの人も自然体だから、悪気はないけどナチュラルに思ったことを言ってしまう。橋本選手の「時は来た!」も、失言扱いされることがあるけど、言葉そのものはかっこいいし、あのときのシチュエーションでは間違ったことを言っていない。ただ、言葉がちょっと中途半端というか、妙な間が空いてしまったんだよね。

やっぱり、事前に喋ることを考えて用意するというのが危険なんだよ。場の空気を読まないで、ウケを狙おうとするから滑る。

リーダーはキャラクターが大事

葉梨さんのハンコ話も、掴みネタのようにさまざまな場所で発言していたみたいだけど、早く誰かが「滑ってますよ」と突っ込んであげるべきだったよね。

俺自身はあまり失言をしないほうだと思う。身内にはいつも怒られそうなことを言ってるけど、表舞台に出たらスイッチが切り替わって、言っていいことと悪いことの区別がつく。でも、人の名前を間違えることはあるよ。「俺と天山」と言おうとして「俺と蝶野」と言ってしまったりね(笑)。

葉梨議員が更迭されて、岸田内閣の支持率が一層下がった。俺は就任当初から岸田さんはキャラクターが弱いなと感じていて、あまり期待していなかった。良い悪いは別にして、安倍さんはキャラが強かったから、次の菅さんも印象が弱く見えたし、岸田さんの普通ぶりも際立ってしまう。

リーダーはハッキリしたタイプのほうが支持を集めやすい。アメリカでは中間選挙が行われたけど、トランプさんがまだあれだけの人気があるのは、やっぱりキャラクターが分かりやすいからだよ。

ただ、あの中間選挙というのは、ルールが複雑だね。陰謀論ではないけど、いろいろと不正がはびこっている気がする。まぁ、アメリカやヨーロッパは、そういう不正があって当たり前というか、地元びいきなんて「あるもの」だと思ってる。ホームとアウェイがあったら、アウェイが不利。それに人種の差、階級の差、住んでる地域の差で不公平なジャッジが下される。

その点、日本人は公平性にこだわるから、贔屓を許さない。それを岸田政権、自民党は改めて知っておくべきだね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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