森永卓郎 (C)週刊実話Web
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矛盾だらけの「ウィズコロナ政策」~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語

11月11日、政府は新型コロナウイルスの感染者数が第7波のピークを超える可能性があるとして、都道府県による「対策強化宣言」の仕組みを新設すると発表した。病床使用率が50%を超えるなどのレベル3では、都道府県知事が対策強化宣言を発令することができ、大人数での会食やイベント参加を自粛要請できる。


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また、病床使用率が80%を超えるなどのレベル4に達する前には、都道府県知事が「医療非常事態宣言」を発出し、出勤の大幅抑制、帰省や旅行の自粛、イベントの延期などを要請できる。


これは行動制限の復活だ。政府は基本方針を「ウィズコロナ政策」に移行し、今後は国民への行動自粛を求めないとみられていた。ところが一転して行動制限を復活させたのは、予想外の感染爆発が起きて慌てたからだろう。何しろ日本の感染者数は、いま世界一になっている。ただ、この事態は当然予測していなければならなかった。第7波がピークアウトして以降、私は感染症の専門家に「第8波は来ますか」と質問し続けてきたが、一人の例外もなく「来る」という答えを得ていたからだ。


しかも、今回の対策でおかしなことは、国民に行動自粛を要請するとしながら、全国旅行支援やGoToイート事業はそのまま実施するという点で、これではアクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。さらに、対策には飲食店に対する営業時間の短縮要請など、事業者側への制限が一切ない。二度と協力金などの財政負担をしたくないということなのだろう。

感染しても検査キットがない…

実は、感染爆発が避けられないと考えていた私は、11月9日に「オミクロン株対応2価ワクチン」を接種した。すると、それまで4回のワクチン接種では何の副反応もなかったので油断していたのだが、1日余りたって異変が起きた。発熱、下痢、頭痛に襲われ、体温が38度8分まで上がって寝込んでしまったのだ。

コロナに感染した可能性もあると思い抗原検査をしようとしたのだが、自宅の検査キットは使い切っていたので、妻にキットを買ってもらおうと頼んだ。だが、近所の薬局にはどこにもなかった。結局、親切な薬剤師さんが情報を提供してくれて、家から数キロ離れた薬局で購入できた。結果は陰性で、症状もすべて24時間で治まったので、明らかに副反応だった。


政府は医療崩壊を防ぐために、高齢者や基礎疾患を持つ人を除いて、症状が出た場合は自ら検査を行い、7日間の自宅療養をするように要請している。しかし、肝心の検査キットがないのだ。このままだと症状があっても検査をせずに動き回る人が増えて、大規模な感染爆発が起きるのではないだろうか。


年末年始は観光業やイベント業、飲食業にとって一番の書き入れ時だ。そこに国民に対する行動自粛がかかれば、営業していても客は入らなくなる。しかも、今回は何の補償もない。せめてGoToイートや全国旅行支援の停止、マスク着用の推奨くらいは、いますぐ実施すべきではないか。


そして一番重要なのは、検査キットの潤沢な供給だ。アベノマスクの評判は散々だったが、医療用抗原検査キットの国民一律配布は歓迎されるだろう。1本1000円として1200億円あればよいのだから、4兆7000億円の予備費で十分対応できるはずだ。