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今すぐ東京オリンピック中止を!~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎
森永卓郎 (C)週刊実話Web

東京、千葉、埼玉、神奈川の4知事が、1月2日に西村康稔経済再生担当大臣を訪ね、政府に緊急事態宣言の発出を要請した。以前から感染症の専門家は「東京都の新規陽性者数が1000人を超えれば、緊急事態宣言が必要となる」との見解を示していた。

12月31日に東京都の新規陽性者数が1337人に達したことを考えると、4知事の要請は1日の出遅れだ。だから私は、要請を受けて政府がすぐに緊急事態宣言を出すと考えていた。ところが、早ければ8日にも発出と、1週間もタイミングが遅れたのだ。

さらに、その中身も極めて緩い規制となった。感染第3波の爆発的拡大は、これで確定的になったとみてよいだろう。

私は、4知事がそろい踏みで要請したことも間違っていたと思う。感染第3波の震源地は東京23区だ。神戸大学の岩田健太郎教授が唱える「狭く、強く、短く」という原則を踏まえれば、最も効率的かつ効果的な対策は、「東京23区を2週間程度封鎖し、大規模なPCR検査を行って、陽性者を隔離する」ことだ。

東京23区の人口は963万人で、南関東4都県の人口の4分の1にすぎない。営業補償や巣ごもり資金の定額給付を行ったとしても、低コストで済む。2週間限定の措置であれば、2兆円もあれば十分だろう。予備費で対応可能な予算だ。

特措法改正後でないと営業補償ができないという考えも、誤っている。東京都に交付金を与えて、東京都に事業をやってもらえばよいだけの話だ。

もちろん、東京23区限定の対策でコロナを完全終息させることはできない。しかし、大きな効果はある。感染第2波の際に新宿・歌舞伎町で対策を徹底したら、かなりの抑え込みに成功したことが何よりの証拠だ。

なぜそうした対策が取れないのか。一番の原因は東京オリンピックだと、私は考えている。

五輪中止を明言すれば関連施設を活用できる

オリンピックの開催が極めて困難になっていることは、誰の目にも明らかだ。水面下では、2032年開催への延期交渉が進んでいるとの情報もある。そんな段階で東京23区にスポットを当てて、厳しい対策を講じることなどできないと、政府は考えているのかもしれない。

しかし私は、いますぐオリンピックの開催中止を明言すべきだと思う。そうすれば、感染抑制の道筋が見えてくる。東京でPCR検査の拡大ができないのは、陽性者を収容できる施設が不足しているからだ。だが、オリンピック中止を明言すれば、施設を収容先として活用できる。

例えば、選手村だけで5632戸もある。無症状者は、宿泊施設ではなく、オリンピック関連の施設に収容すればよい。電気や水道、トイレなどは整備されているから、すぐに数万人、あるいは10万人程度の収容が可能になるだろう。

オリンピック利権を持つ人たちは、ぎりぎりまで中止を決定しないだろう。それまでの間、報酬を受け続けられるからだ。しかし、そんな理由で東京の感染抑制を先送りにすれば、日本の経済社会が、しばらく立ち上がれなくなるほどの痛手を受けてしまう。

東京都民に危機感を訴える手段としても、東京オリンピック中止は、大きな効果を持つとみられる。早く決断するに越したことはないのだ。

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