中国企業が続々と日本に進出し、売り上げを急増させている。「メード・イン・チャイナ」が忌避されたのも昔の話だ。今や若者を中心に、好みの選択対象になりつつある。
中国企業の日本上陸最新状況を追っていこう。
アパレル関係者が語る。
「ファッションブランドの『SHEIN(シーイン)』が、東京・原宿に世界初の常設店舗を11月13日にオープンし、世界中の注目を集めています。その直前には、大阪に日本初の期間限定店舗をオープンしましたが、入店まで2〜3時間待ちの大盛況でした」
『SHEIN』について、ファッション業界関係者が明かす。
「2015年に中国で設立された低価格ファッション、いわゆるファストファッションのブランドです。最新の流行を取り入れながらも、実店舗を持たないネット通販限定のブランドで、今や世界150カ国以上で販売。世界売上高が『ユニクロを超えた』と報じられました」
中国の経済メディア『晩点』によれば、2021年の売上高は約157億ドル(約2兆1385億円)で、スウェーデンの世界的ファッションブランド『H&M』の21年の売上1989億6700万クローナ(約2兆3900億円)にも肉薄しているという。
『SHEIN』の成功は破格の低価格設定にある。女性向けのアイテムを中心に、Tシャツが300円から。スカートやワンピースも1000円台、高めでも2000円台までが大半で、他社よりも3〜4割安い印象だ。
「世界のアパレル企業は、生産拠点の中国や東南アジアのメーカーに購入代金を支払い、さらに市場に出るまでに中間マージンが上乗せされます。ところがSHEINの場合は無店舗。注文を受けてから直接購買者に届けるネット通販なので、中間マージンもなく、ほぼ卸売価格に近い激安販売ができるのです。さらにSNSを駆使し、広告費も大幅カット。目下、縫製技術やデザインも格段にレベルアップし、世界中から支持されています」(前出・アパレル関係者)
“TikTok”はアクティブユーザー10億人
コロナ禍以降の2020年前後から、インフレで苦しむアメリカのZ世代を中心に爆発的に売れ始め、その流れが日本にも届いたようだ。
日本上陸で注目されている中国のファッションブランドは『SHEIN』だけではない。
「2021年には、中国メンズブランド『ダンノン』が銀座松屋に初出店しました。同じく中国のレディースブランド『アイシクル(ICICLE)』も大阪・阪急百貨店うめだ本店に初出店。『ダンノン』のモットーは『心の自由とアート・オブ・ライフ』。他方、『アイシクル』は古代の東洋思想『メード・イン・アース』に基づき、自然からインスピレーションを受けたアイテムを展開。いずれも欧米の優れたデザインを学んだ中国の新世代が、新しいファッションを創出しています」(同)
家電も中国製品が日本市場を席巻する。量販店関係者が言う。
「中国ブランドの家電は、今や日本製品と同等に扱われています。品質も良く、中国製品の方が安いため、購入者が増えている」
英調査会社ユーロモニターインターナショナルによれば、2021年には中国メーカー『ハイセンス』の日本でのテレビ販売台数シェアが12.9%にまで伸びたという。5年前まではわずか2.4%だったのに、だ。
また、中国の『ByteDance(バイトダンス)』が2017年に提供開始した動画共有アプリ『TikTok』は、21年時点で全世界に10億人のアクティブユーザーがいるとされ、その後も増え続けている。ICT(情報通信技術)関係者が解説する。
「日本の利用者は1000万人以上といわれています。TikTokの影響力は大きく、動画で紹介された商品が若年層を中心に爆売れする傾向があり、企業も積極的に利用し始めている」
低価格で技術面も優れた製品
今年7月には中国EV(電気自動車)メーカー『BYD』が、日本の乗用車市場に本格的に進出すると発表し、国内の自動車メーカーに衝撃を与えた。自動車メーカー関係者が語る。
「BYDは2023年にEV車を発売すると宣言しました。SUV『ATTO 3(アットスリー)』、コンパクトカー「DOLPHIN(ドルフィン)」、セダン「SEAL(シール)」の3車種です」
日本では、日産のコンパクトEV『サクラ』が6月に発売され、累計約3万3000台(10月末時点)受注の大ヒット。国の補助金を利用すれば200万円を切るのも人気の秘密だという。
「実はBYDが来年発売する予定の『ドルフィン』は『サクラ』と同じ軽自動車のEVです。ところが『サクラ』よりも大容量のバッテリーや大出力のモーターを搭載しながらも、中国では『サクラ』よりも安い。中国と同じ価格帯で勝負されると、『サクラ』だけでなく、国内自動車全メーカーにとって脅威となる」(同)
日本製品の方が技術面でもアイデア面でも優れている、というのはもはや過去の遺物のようだ。
激しい競争を勝ち抜いた中国企業の安価な製品が、今後も続々と上陸し、日本人の心を鷲掴みにすることだろう。中国を「パクリ文化」と揶揄し、あぐらをかいてきたしっぺ返しがやってくる。
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